ヒック! オロロ!

@chased_dogs

ヒック! オロロ!

 みなみうみなかに、しろ砂浜すなはま岩々いわいわかこまれたちいさなしまがありました。その島は、ペンギンがたくさんんでいるので、ペンギンじまばれていました。


 ペンギン島へくと、あお草原くさはらうえにペンギンがっていました。なにやらしきりにからだふるわせ、いています。なんでしょう?

 ちかづいてみますと、

「ヒック!」

 しゃっくりをしているようでした。

「ヒック! ヒック! ……ヒック!」

 一際ひときわつよくしゃっくりをすると、真んまる見開みひらき、体をみぎひだりよじって、

「オロロー!」

 ペンギンのくちからざかなしました。ペンギンはくびかしげながら、

「ううん、焼き魚をぎたかなあ?」

 といました。すると、よこからべつのペンギンがスーっとすべってやってて、ひょい、パクリ! 焼き魚を食べてしまいました。


 しばらくして、焼き魚を食べたペンギンは、

「ヒック!」

 しゃっくりをしはじめました。

「ヒック! ヒック! ……ヒック!」

 一際強くしゃっくりをすると、真ん丸な目を見開き、体を右に左に捩って、

「オロロー!」

 ペンギンの口からトマトとレタスとリンゴのサラダが飛び出しました。ペンギンは首を傾げながら、

「ううん、サラダを食べ過ぎたかなあ?」

 と言いました。すると、横から別のペンギンがスーっと滑ってやって来て、ひょい、パクリ! トマトとレタスとリンゴのサラダを食べてしまいました。


 しばらくして、トマトとレタスとリンゴのサラダを食べたペンギンは、

「ヒック!」

 しゃっくりをしはじめました。

「ヒック! ヒック! ……ヒック!」

 一際強くしゃっくりをすると、真ん丸な目を見開き、体を右に左に捩って、

「オロロー!」

 ペンギンの口からビスコッティとエスプレッソコーヒーと角砂糖かくざとうが飛び出しました。ペンギンは首を傾げながら、

「ううん、コーヒーをみ過ぎたかなあ?」

 と言いました。すると、横から別のペンギンがスーっと滑ってやって来て、ひょい、パク、ゴク! ビスコッティとエスプレッソと角砂糖をたいらげてしまいました。


 しばらくして、ビスコッティとエスプレッソと角砂糖を平げたペンギンは、

「ヒック!」

 しゃっくりをしはじめました。

「ヒック! ヒック! ……ヒック!」

 一際強くしゃっくりをすると、真ん丸な目を見開き、体を右に左に捩って、

「オロロー!」

 ペンギンの口から大きなたまごが飛び出しました。ペンギンは首を傾げながら、

「ううん、卵なんか食べたかね?」

 と言いました。すると、横から別のペンギンがスーっと滑ってやって来て、コツン! 卵をくちばしでつつきました。その瞬間しゅんかん、パリッ、トパン! 卵がれて、なかからおおきなペンギンのひながひょっこりかおを出しました。

「お、お、お、おかあちゃん……」

 雛は卵をいたペンギンを見て言いました。ペンギンは「だれらないけれど、この子は自分じぶん子供こどもちがいない」と思いました。

 あちらこちらからペンギンが滑り来ると、

「おめでとう!」

「かわいいおとこの子だね!」

「ハッピーバースデー!」

 と口々くちぐちにおいわいをしました。そして、

「オロロー!」「オロロー!」「オロロー!」

 口々にお祝いのしなを吐き出しました。

 ひとつはトマトとレタスとリンゴのサラダでした。もう一つは焼き魚でした。そして最後さいごの一つは、大きなケーキと素敵すてき花束はなたばでした。

「ありがとう、ありがとう」

 母親になったペンギンはその一つ一つにおれいを言いました。


 雛ペンギンはお祝いの品を食べると、食べたぶんだけすくすくと大きくそだちました。そして、ほかペンギンたちとおなじく、自分でうみて魚をとるようになりました。しかし雛ペンギンは大きく育ち過ぎ、大きなつばさひろ不器用ぶきようそうによちよちとあるくのがやっとで、海へ飛びみ魚をとるのはとても無理むり様子ようすです。

「どうしたら上手じょうずにお魚とれるかな?」

 雛ペンギンが訊ねると、

「なに簡単かんたんさ、サッとび込んでチュッとくわえればいいのさ!」

 友達ともだちの小ペンギンたちはまってそう言うのです。でも雛ペンギンにはとても海でおよげる姿すがた想像そうぞうできませんでした。想像の海であわおぼれていると、本物ほんものの海から強々こわごわとしたかぜがビョオと吹きつけました。雛ペンギンの大きな翼は風をしっかとつかまえて、気がつくとそらたかいところまで飛び上がっていました。下で小ペンギンたちが見上みあげています。雛ペンギンは、はじめからっていたみたいに器用に風をり、海から飛び出た魚めがけ空を滑って魚をつかまえると、パクっと丸呑まるのみしました。そしてまた風を掴み空へ上がると、かえし繰り返し、魚を捕まえつづけました。その姿は大昔おおむかしのプテラノドンにそっくりです。

「ねえ、どうしたらそんなに上手に空を飛べるんだい?」

 小ペンギンたちが雛ペンギンに訊ねました。

「簡単さ、グッと風を掴んで、ワッと上がるんだ!」

 雛ペンギンはそう返しました。

 そしてどこからともなくペンギンが滑ってきて言いました。

「ハッピーエンドだね?」

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