第13話 ある夜の風景(お題:「これが! 俺の! グルメだ!!」  を詰め込んだ、“おいしそう!”な飲食風景)

 冷蔵庫から取り出したものをちゃぶ台に置き、父さんはカップ酒に口を付けた。


 皿の上にはマグロの刺身。


 チンしたご飯の上に半分ほど無造作に置き、醤油とごま油とチューブのおろしにんにく。


 最後に卵を落として口一杯に頬張る。




 暗い部屋の片隅で僕はじっとそれを眺めていた。


 ほしがれば父さんは僕を叩くから。




 ご飯を平らげ、残りの刺身をつついていた父さんは、少しすると赤い顔でごろりと横になり動かなくなった。




 僕は起こさないようそろりとちゃぶ台に近づく。


 皿まであと少しのところで ――首を掴まれた。




「お父さん! またこんなところで寝て! ミィが狙ってたじゃないの!」




 ありつけなかった悲しみに、ただ、にゃあと気の抜けた声だけが漏れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る