第14話 ふたりの帰省(お題:お盆)

 おがらから立ち上った煙が目にしみる。


「…また来年。父さん、母さん」


 亡くなって二回目のお盆が終わろうとしている。


 視界が歪むのは煙のせいだと、胸に宿った寂しさには気づかないふりをする。


 明日は私も家に帰らないといけない。


「やっぱ実家はいいねぇ」


 送り火を終えてリビングに戻ると、シャツの胸元を引っ張りながらテレビを見ている兄と目が合った。


 実家に戻ってきてもなんもしなかったな、この人。


「お兄ちゃんは帰らないの?」


「まだしばらくはいるつもり」


「…そう」


「まだまだ、お前が心配だからね」


 からかうように笑った兄の腕がふわりと私を包む。


「成仏するのは、花嫁姿見届けてからかな」


 半透明の腕は、どこかあたたかい気がした。

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