第12話 門番の苦悩(お題:願い)

「ここですか、例の門は」


 訪ねてきたのは一人の男。


 その声は穏やかで、けれど生気がない。


 よく来るタイプの死にたがり。




 男は門を見る。


 向こう側へ行けるのは死んだ者だけ。


 そのまなざしは遠く。




――面倒だ。


 勝手にしろとナイフを投げる。




 ほんの少しの躊躇の後、男は胸を刺し貫いた。






「……死ねない?」


「だろうな」




「誰です?」


 いつの間にか戻ってきていた相棒が、自分の頭を小脇に抱えて尋ねる。




「お前と一緒」


「あぁ、早く死ねたらいいですね、お互い」




 ここに来て以来毎日死に方を聞いてくる少年。


 いい加減消えろとうっかり願ってしまったら、なんと増えた。




 ここはあの世とこの世を繋ぐ門。


 この糞ゲートは絶対に、人の願いを叶えることはない。

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