第7話 花が咲いたら(お題:花)

 寺の老木を剪定したとかで、近所の婆さんから桜の枝をもらった。


 男の一人暮らしに花? とは思ったが、昔の花瓶を引っ張り出してみるとなかなかどうして、悪くないもんだった。


 部屋が寒いからか桜はゆっくりと成長した。


 堅いつぼみが一日一日膨らんで、花びらが見え始める。


 明日には咲くかな。


 娘の成長を見守る父親ってこんな感じだろうか。いや俺、彼女すらいないんだけど。


 あぁ、この花が散るまでだけでも、桜の精が恩返しに来てくれたりしないだろうか。


 翌日、仕事から帰ると部屋に灯りがついていた。

 それに味噌汁の匂い。


 驚いていると台所から出てきたピンクのエプロン姿が跪いた。


「桜の精にござる」


 あぁ、うん。そういえば、老木だったよね。

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