第8話 彼女の居る部屋(お題:匂い)

仕事から帰ると晩飯の匂い。


今日はハンバーグか。


かすかにトマトの匂いもする。ソースか、それとも添えられたスープか。


「オカエリナサイ」


無機質な声が言う。


空しさに襲われる。


これなら元カノのひどい料理のほうがマシ。


そろそろ限界だ。


「もしもし? この前無料キャンペーンで置いてかれたロボットなんですけど、いらないんで引き取ってほし…え?」


番号はでたらめだった。


電話を切ると、ロボットの口から紙がはき出される。


それは元カノからの警告文。


『捨てようとしたら部屋が排泄物の匂いになるわよ』


匂いだけでも旨そうならいいのに。


そう言ったことを根に持っていたのか。


ロボット型匂い発生装置は今日も旨そうな匂いで俺の部屋を満たす。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る