第4話 小早川時計店1(お題:時)

「困ってるの」

「どれ、見せてごらん」

 五歳くらいだろうか。訪れた幼いお客様は店主の手のひらへ小さな時計を差し出した。

「なるほど」

 確かに少女が言うように、秒針が逆に回転している。

「直せる?」

「多分ね」

「お願い。あまり時間がないの」

 どこかに出かける予定でもあるのか、可愛いお客様は焦ったご様子。

 ふたを開けて歯車を見るとやっぱりずれている。食い違いを直し、ついでに電池も入れ替えて時間を合わせる。

「はい、終わり」

 顔を上げると既に少女の姿はなく。

「助かったわ」

 少女によく似た妙齢の女性が笑っていた。

「間に合ってよかった。あれ以上若返ったらここにも来られなかったもの」


 ここは小早川時計店。

 壊れた時計が集う場所。

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