第3話 依り代(お題:雪)

もう一度会いたい人がいる。




街で声をかけてきた親切なおばさんにぽつりとこぼしたら、詳しい人だったらしく依り代がどうのと話を聞かせてくれた。


眠くて頭に入らなかったが、人形が必要だとか、本人と似ているといいとか。


おばさんは一緒に会合に出ようと誘ってくれたが恥ずかしかったので断ってしまった。




うちに人形はない。


それならと、ひとり庭に出る。踏みしめるのは白い雪。




思いが強ければ、雪人形でも魂は宿るだろうか。




土の混じった茶色い雪で形作る。鼻は…人参ないし、みかんでいいや。


うん、似てる。なんて思ってたのに。




頭を抱える。きっと何かを間違えたんだ。


妙なものが宿ってしまった。








「ぼくの顔をお食べよ!」


「頼むから帰って」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る