第2話 雪の日(お題:雪)

「ママ! 雪!」


はしゃぐ娘は傘を手にくるくると庭を駆ける。


「だーめ」


マスクを外し、空を見上げる我が子の口をふさぐと、指の間から不満げな声が漏れた。


食べさせられない。汚染された空から降り注ぐ灰色の雪。例え咳が出る程度のものでも。


なだめるように背中から抱きしめる。


「ママ、お空青いね」


つかの間の青空が顔を出している。雪はもうすぐ止むだろう。




この雪には浄化作用がある。この街の汚染物質を吸着して、ほんの少しの間だけ、空気を綺麗にしてくれる。




雪が止み、マスクを外す許可を出す。


「冷たくて気持ちいい!」


青空と、一回だけの深呼吸。雪の日には、この子の笑顔が満ちている。

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