第159話 リヴァイアス領主フリム……。


「うまくいきそうだな」


「あれ??なにかおかしくないですか?」



金属を磨いた鏡をいくつも集めてその前に超魔力水を作って光を卵に集めているのだがなにかおかしい。


光が卵に煙のように吸い込まれていく。



「一旦中止で」


「……そうだな」



この大きな卵の中身が生きているのか死んでいるのか、卵の殻の反応なのかは分からないが……この意味の分からない反応が怖いので一旦停止。


そもそもここで育てるにしてもクーリディアスに狙われる原因になるかもしれないし王都に連れて行ったとしても育てられるかわからない。そもそも言うことを聞くかも不明。


というわけで……


「生まれてから様子を見ましょう」


「そうだな。そもそも竜が俺たちを恨んでいる可能性もあるかもしれんこちらで育ててもらいたい。無理なら無理でいい」


「わかりました。でも生まれたとしてこちらで無理そうなら一度学園で調べてもらいましょう」


「うむ、それでいい……じゃあ俺は一度王都に帰る。体調が落ち着いたら王都に戻ってこい」


「はい」



結局卵の問題は後回しにした。


家臣たちが色々言ってくるがどう考えても面倒事になるから私もシャルルも押し付け合いたい気持ちがはっきり浮かんでいた。しかしシャルルは国教である精霊教から不興を買うと「ライアームこそ王に!」とシャルルの側近にも裏切られかねないという判断で押し付けられた。


私はドラゴンが生まれたら学園に送りたい気持ちもある。そもそも知識のある人が飼育したほうが良いと思うし、海洋国家と言われるクーリディアスでは「守護竜王」なんて崇拝もされていた個体の子供だ。奪い返せとクーリディアスが今度こそ躍起になって襲ってくる可能性もある。



どちらを選んだとしてもデメリットはあるのだ。



かと言って学園に卵を送ったとして……学園内には精霊教の神殿はあるし争いの種をとんでもないことになりかねない。賢者たちもなにかしでかすかもわからない。



「気をつけるんだぞ?」


「はい、シャルルも気をつけてくださいね」


「今は敵よりもむしろ爺が怖いが……いや、ではな」



超魔力水でシャルルもレージリア宰相も他の精鋭も万全の状態で王都に帰っていった。


私のことが心配なのかジロジロと何度も頭の先から爪先まで見てきたシャルルだが何だったのだろうか?もしかしたら精霊が何体もいたし私の体に異変が起きると思ったのかもしれないな。


今のところアホ毛はそのままだ。このぶんぶん動く髪の束は元に戻って欲しいのだが…………。


数ヶ月はこちらで領地の安静化と対クーリディアスに備えるように言われた。


期限があるのは私がいないといけない行事?が王都であるらしいのでクーリディアスに動きがなかったらそれまでには必ず帰ってこいと念を押された。


このまま私も帰りたいがやることがある。



「どうしますかの?」



亀人の家臣イリニ・ククレクク・ラオー・テロス。


覚えにくかったがこの領地では頼りにされている偉い人だ。テロスに聞かれたが「どうしますか」かぁ……。



「人員を割いて別の領地から届く食料がちゃんと届くように道の整備や護衛をお願いします。食料をとにかく確保してください。人手が余るので王都への撤退戦も考えて簡易的な拠点を王都に続く道に作ってください。浜辺近くの要塞化も行ってください。入江状なので完璧に守るのは無理なので陸地に小さな砦を点在させて――――アモスの指示に従って作ってください」



とにかく指示を出していく。やるべきことが多すぎる。


経済を考えるなら住民の戸籍謄本を作ったり隷属兵の名簿を作り上げたいがいつクーリディアスから敵が来るのか分からないし、食料の調達と防衛を両立させなければならない。


大人の男性、しかも武人で威圧的なアモスさんをアモスと呼び捨てにするのは難しいが規律のためにもやらないといけない。


論功行賞で褒美やら何やらを渡さないといけないらしいが今はまだ領地中が「また攻めてくるかもしれない」「食料をどうするんだ!!?」とパニック状態でそんな暇はない。


頭を下げてちゃんとリヴァイアスに仕えると言ってくれたアモスには申し訳ないが褒美は待ってもらう。



「隷属した兵士たちは大量にいますし、うまく使ってください。設備についてはボルッソの子供たちを無理をさせない程度に働かせてください……鞭打ったり無体をしてはいけませんよ」



ボルッソの息子たち、隠し子まで全員ちゃんと数えると200人近くいた。彼らは何組かに分けられて監督付きで別々の生活することが決まった。誰か1人でも悪さをすると連帯責任で親を含む全員が何かしらの処罰されることとなる。


流石に幼児や胎児は除外してあげたが全員まとめて拷問後に殺されるよりかは良いだろうし彼らも親から厳重に厳重に言い含められていて……私を見かけるたびに土下座されたり感謝の祈りを捧げられる。勘弁してほしい。



「フリム様は周辺の貴族への対応をお願いします。既に列ができています」


「……はい」



とにかく周辺領地から人に物資が来ている。


シャルルの命令で食料や最低限の兵が届くのは決まっているがここの責任者は私だ。彼らの中にはクーリディアスとの戦争自体知らない人が多いし事情を説明して協力関係を築く必要がある。すごくめんどくさい。


爵位は確実に私がトップだしへりくだる必要はないが舐められると面倒だ。


ムキムキなレージリア宰相はシャルルと王都に戻ってしまったしエール先生とクラルス先生とも協力して対応しないといけない。多分周りの貴族も突然のことで事情を知りたいだろう。



東の大領地リヴァイアスを統治する領主として対応しないといけない。



全てに目が届くものではないが可能な限り頑張ろう。…………リヴァイアスは書類仕事と政治を手伝ってくれないかな?

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