第2話 オーディション

今日はオーディション当日だ。




オーディションが始まるまであと10分ほど時間があるので、今は控室で待機しているところ。


すると、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。


どうやら誰か来たみたい。




ドアを開けると、そこには1人の女性が立っていた。年齢は20代前半くらいかな? 身長は170センチくらいでスタイルが良くとても綺麗だ。髪の色は黒だが、毛先がほんのり茶色になっている。




「はじめまして。今日はよろしくお願いします」




礼儀正しく挨拶された。私も慌てて自己紹介をする。


その後、お互いに軽く会話をした。




名前は九条彩音くじょうあやねというらしい。




私と同い年らしいのだが、雰囲気が大人っぽいのでもっと歳上のように感じる。


しばらくすると、スタッフらしき人が呼びにきた。




いよいよ始まるんだ。




緊張してきた。心臓が激しく鼓動するのを感じる。


隣を見ると春香も同じようで緊張した面持ちをしている。




そんな私たちを見たのか、九条さんは優しく笑いかけながらこう言った。




「大丈夫ですよ」




不思議とその言葉を聞くだけで安心感を覚えた。


きっとこの人はすごい人になる。根拠はないけどなぜかそう感じた。




それからオーディションが始まった。




まずは歌唱力のテストが行われた。


順番はオーディションを受ける人数によって変わるらしく、今回は最後から2番目になったから少し時間に余裕がある。




私は、控室で呼ばれるのを待っていた。


時間が過ぎていき,,,


次は私の番だ。マイクの前に立ち息を吸う。




曲は、伝説のアイドル紅林恵奈くればやしえなの【Try me】


「♪〜〜」


この曲は私のお気に入りの曲だ。




この曲を聴くと勇気が出るような気がして、


辛いことがあっても乗り越えられる気がした。


だから、この曲を歌う時はいつも全力を出すようにしていた。




「…………ふぅー」




曲を歌い終えると私は一呼吸置いた後に、審査員たちの方へ向き直り、挨拶をした。


控室に戻りはじめたとき,,,




「最後は彼女だね」




社長さんが言った。




「楽しみですね」


「ああ」


2人が話していると、その女の子が現れた。


その子は、私よりも少し背が低くて華奢な体つきをしており、肌が白くて顔が整っている美少女だ。


彼女は、ステージの中央に立つと静かに目を閉じた。




(えっ?)




一瞬、彼女が消えたように見えた。次の瞬間にはもう歌っていた。


彼女の歌を聴いた時、衝撃を受けた。


今まで聴いたことの無い歌だった。


彼女の歌には感情がこもっており、聴いていて心の底から震えるような感覚に襲われた。


そして、気づいた時には彼女の歌う姿に見惚れてしまっていた。




「…………」




曲が終わり、静寂が訪れる。


誰もが言葉を発せずに黙って彼女を見つめる。


そして、数秒後……


パチッ……パチ……パチン……


拍手の音と共に歓声が上がった。




会場にいる全員が彼女に魅せられてしまったのだ。


私もその中の一人である。


彼女こそが本物のアイドルだと確信させられてしまった。




オーディションが終わった後、私達は控室に戻った。


そこで、私達を待っていたのは社長さんからの呼び出しだ。




私達が部屋に入ると社長さんが話しかけてきた。


どうやら、オーディションについての話らしい。


その内容は私と春香は合格したという。




私は誘いのメールが来た時から合格を確信していたんだけどね。


隣を見ると、そこには嬉しそうな顔をしている春香の姿があった。


こうして私と春香は晴れて芸能事務所に所属することになった。

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