第4話 逆転レベルアップ
(終わった……いきなりやっちまった……)
使い魔を選んだ後、俺は秒で後悔していた。
『わたしを選んでくれてありがとう。頑張ろうね、キミ』
黒い子猫がふわふわと宙を飛びながら俺に話しかけてきた。普通に話せるのか。何でもありだな異世界って。
「ん、あぁ……」
俺はつい気のない返事をしてしまう。いやいやダメだ。次の使い魔と契約するまではこの猫としっかり協力してやっていかないといけない訳だし。
気持ちを前向きに切り替える。それが俺の唯一の長所だとウチの父ちゃんも言ってたっけ。
「ごめんごめん、ちょっと考え事してた。そうだ、もちろん初めましてだから自己紹介か。俺の名前は
『え? わたし? わたしはえーっとね……』
あれ、どうしたんだろう。何か変なこと聞いちゃったかな。俺がぼんやりと子猫を見つめていると、突然前足をもう一方の前足の上でポンッと叩いてみせた。なんだそれ。何かをひらめいたってことか?
『うん。そうそう、わたしは使い魔のネコだから、〈マコちゃん〉って呼んでくれたらいいよ』
「マコちゃん? それがキミの名前?」
『うんっ』
「……あぁ、わかった。よろしく頼むぜ。マコちゃん」
俺が言うと、マコちゃんはにっこりとほほ笑んだ。
過去の選択を
『よしよし、無事に使い魔も決められたようだの。おっと、その子は――』
パッと突然俺たちの目の前に現れたラプラス。最後に何かを言いかけたが途中で口をつぐんだ。
「あぁ、いつでもスタートできるぜ」
『そうか、ではお前たちに異世界初心者特典のプレゼントを与えよう』
「マジすか? おーし、リセマラの鬼と言われた俺の神引きが
『ぬ? ガチャではないぞ』
「え、そうなの?」
『これは参加者とその使い魔に合わせて、我が自らが用意した特注品だ。ありがたく使うがよい』
そう言って、ラプラスは何もない宙に二つの輪を出現させた。
1つは鈴が付いたピンク色の
1つは厨二心をくすぐる魔法陣の模様が刻まれた銀の
『それを各自ハメておくように。我は次の確認があるからちょっと席を外すぞ』
ラプラスはそう言い残して俺たちの前から【バヒュン】と消えた。
俺はイカした指輪を前にしてラプラスのことは完全に頭から消えていた。ウキウキしながら指輪を手にして自分の指に順番にハメていく、すると右手の人差し指がぴったりだったのでそのままに。
もう一つの首輪はマコちゃんの首につけてあげた。ピンク色の首輪は黒い子猫のマコちゃんによく映える。
「いいね、マコちゃん似合うじゃん」
『フフ、キミの指輪もカッコいいよ』
俺たちはご
『オッケーオッケー確認してきたぞ。ん、お前たち、何だその首輪と指輪は?』
「え? さっきアンタが置いて行ったものだけど」
『違う違う。我がお前たちにプレゼントしたのは2つとも腕輪じゃぞ』
「へ?」
1つ目は鈴が付いたピンク色の
もう1つは
「おいおい、何言ってんだよ。どっからどう見ても、首輪と指輪だろ?」
『お前は目がバカなのか? どっちも腕輪だと言っておろう。ピンクの
どうやらマジで言っているらしい。その証拠にラプラスの目がマジだと言っている。
「ウソだろ。どうやったらこのピンクのいかにも猫用の鈴が付いた首輪が男物の腕輪になって、シルバーのかっちょいい指輪が子猫の腕輪になるんだよ? アンタのセンス完全にイカれてんな」
『フハハハ、そうだろう? 我ながらなかなか尖ったデザインにできたと思うておる』
だめだこのバイト。意思の
「わかったよ、逆なんだな? じゃあ外して……あれ? このっ、ぬににに!」
指輪を外そうとするがぴったりと肌にくっついて全く動かない。外すどころか回すことすらできない始末。
『何をしておる? その腕輪は一度持ち主による装着の意思が確定したらこの異世界を出るまで外すことはできぬぞ』
「え、そうなの? まぁ別にきつくも感じないし、特に生活に支障もなさそうだから、それくらいなら構わないけど……」
『そうか。それならよかったわ。あと、その腕輪の効力だが、倒した敵の経験値を腕輪の持ち主に与えるというものだ』
「ん? と言うことはつまり……?」
『つまりだ。ピンクの腕輪はテツに、銀の腕輪はマコちゃん用に
「そ、そんなバカな……」
『まぁ大した問題ではなさそうだな。むしろ二人の絆が深まってよいではないか。最初からこうすればよかったと思うほどにな。フハハハ!』
「……わかったぞ。さてはアンタ、ポンコツだな」
こうして、俺たちは
確かに俺とマコちゃんの強さが同じくらいで、同じようなペースで敵を倒して行ければ大した問題はないのかもしれないけど。本当に大丈夫なのだろうか。
『さてと、では準備はいいか? お前たちがSランククエストに挑む世界、〈ローレリア大陸〉のどこかへ転送するぞ』
「ちょ……どこかへって、それに聞きたいことがまだ――」
【バヒュン】という、いつもの音が聞こえたと思ったら、俺たちはさっきまでの真っ白な世界とは異なる、色づいた世界に足をつけていた。
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