イケメン探し 3人用台本

ちぃねぇ

第1話 イケメン探し

【設定】

葵:ごくごく普通の男子大学生。

おばあ:葵のお祖母ちゃん。無茶ぶりが過ぎる人。

遥:女性にしとくにはもったいないイケメン。



0:祖母の家。


おばあ:イケメンを連れてこい

葵:は?

おばあ:イケメンだよイケメン!寿命が20歳は伸びるようなイケメン!見たいんだよぉ

葵:ばあちゃん?突然どうしたの

おばあ:葵は知らないのかい?イケメンは見るだけでその人の心を元気にし、若返らせ、明日への活力をくれる。わたしゃそんなイケメンが見たいんだよぉ!

葵:んな無茶な

おばあ:葵!老い先短い老人の言うことは聞くもんだよ!?

葵:老い先って…ばあちゃんまだ70じゃん。この間の検診でも「驚くほど健康体だ」ってお医者さんに言われたでしょ

おばあ:あいつはヤブだよ

葵:なんてこと言うんだよ!

おばあ:毎日毎日シワシワのじじいの顔見て…どこに張り合いがあるってんだい。トキメかないと心が先に逝っちまうよ

葵:70にしてトキメキを求めるか…あと…じいちゃんが隅でこっちをチラチラ見てるんだけど

おばあ:(爺に向かって)なんだい!私があんたを愛してることくらいわかるだろう?あんたは私の半身なんだから堂々としてなさいよ!

葵:あ、赤くなった。これで成り立ってんだよなぁこの夫婦

おばあ:いいこと葵、イケメンを連れてくるんだよ?飛び切りのイケメンを!

葵:ええ?テレビの中じゃダメなの…?

おばあ:テレビの中じゃ触れられないだろう?

葵:触れる気なの!?おさわり禁止だよ!?

おばあ:なんだい、あんたの彼氏ならちょっとくらい触れてもいいだろう?

葵:俺の彼氏ぃ!?性別分かってる?俺男だよ!?

おばあ:今時男同士だっていいだろう

葵:いや、否定とかしないけど!だけど俺は普通に女の子が好きだよ!?

おばあ:んじゃあ彼女いてもいいから彼氏も作ってきな!私の延命の為に

葵:無茶が過ぎない!?

おばあ:ああ…私はイケメンを見ないと…今すぐイケメンに触らないと…天に召されちまうんだぁ…孫が老婆を虐げるよぉ…老人虐待だぁ…

葵:トンデモ理論展開すなっ!

おばあ:ああ…イケメンが見たい…見たいなぁ…(チラッ)

葵:くそばばあ…


0:次の日。


葵:(ブツブツ)イケメン…どうしよ。いや…あんな願い叶える義理は無いんだけど…イケメン…イケメンかぁ…レンタル彼氏とか?え、俺がレンタルするの?マジで?

遥:葵?どうしたのさっきから

葵:いや、イケメンとの出会い方を模索してて

遥:は?

葵:なぁ、遥の友達にお触りOKのイケメンいない?

遥:ふっ。何そのぶっ飛んだ質問

葵:笑うなよ。自分でもぶっ飛んでる自覚はあるんだから

遥:イケメンねぇ…でも…私以上にイケメンな男子、この大学にいたっけ?

葵:………そうだった……こいつ二年連続ミスター優勝してるんだった…

遥:最初はミスコンに出てくれって話だと思って受けたんだけどねぇ…会場行ってみたらまさかのミスター。でも王子さまみたいな格好できて面白かったなぁ

葵:あんときのお前…様(さま)になりすぎて3人くらい女子が卒倒してたぞ

遥:みんな優しいよね。一人男装してる私に気を使って盛り上げてくれてさ

葵:そういうんじゃないと思うけど

遥:次の年こそ男子が優勝するだろうなって思ってたんだけどね…

葵:ああ…あのブラッティ・フェスティバルか

遥:そんな愛称ついてるんだ?

葵:その名の通り、血の文化祭……紙に書かれたお題ゼリフを観客にランダムに聞かせてる最中、お前に「可愛いね」って囁かれた女子たちが次々と鼻血出してたっけ…

遥:そんなこともあったねぇ…懐かしい

葵:そんなしみじみ振り返れる思い出かよ。その鼻血女子に今まさに告ろうとしてた俺の友人は血涙(ちなみだ)流してたぞ

遥:みんなノリいいよね

葵:ノリで体液ぶちまけられるかっつの

遥:んで?なんで葵はイケメンなんて探してるわけ?

葵:ああ…うちのばあちゃんがイケメンに会わせろって騒ぎ出して

遥:ええ?面白いおばあ様ね

葵:面白くねぇよ、こっちはめちゃくちゃ困ってんだよ

遥:……じゃあ、私が助けてあげようか

葵:え?

遥:週末なら時間あるんだけど…おばあ様に会ってあげようか?

葵:え………いいのか?

遥:ああでも…葵のおばあ様、私じゃ納得しないかしら?やっぱ付いてる人のほうがいい?

葵:いきなり下ネタぶっこむなよ……あー…うん…どうだろう…でも他にあてないし………遥、頼めるか?

遥:いいよー?その代わり、喜んでもらえたら帰りにケーキ奢ってよ

葵:わかった


0:週末。祖母の家の前に二人。


遥:いよいよね…喜んでくれるかしら

葵:……お前、男装の麗人とか呼ばれてねぇ?

遥:え?

葵:今日…服…どうなってんの?肩パット入ってる?めっちゃスラっとしてんのに決まってるし…それにメイクも……いつもと違う?

遥:ああ…出来るだけイケメンに近づいてみた。…どう?少しはイケメンになったかしら?

葵:少しも何も…カッコよすぎん?…男として悔しいぞ

遥:ふっ…じゃあ目論見(もくろみ)通りってことかな?ああでも、悔しがる必要はないでしょ?葵は何にもしなくても十分魅力的でカッコよくて…そして可愛いんだから

葵:え、心臓バクバクしてきたんだけど…これが恋?

遥:あら、私に落ちてくれるの?じゃあそれは今度、二人っきりの時にお願いね?

葵:……お前マジで産まれてくる性別間違えたんじゃね…

遥:さ、おばあ様に会いに行くわよ

葵:お、おう。(戸を開ける音)……ばあちゃんいるー?遊びに来たよー

おばあ:ああ、葵、よく来たね

遥:こんにちわ、おばあ様

おばあ:……えっ

葵:こっち、大学の友達の遥って言うんだ。ばあちゃんがイケメンに会わせろって騒ぐから連れてきたんだぜ

おばあ:なっ…

遥:いきなり押しかけてごめんなさい

おばあ:なあ……!

葵:ばあちゃん?

おばあ:ちょ、ちょっとタンマァァァ!!

葵:ばあちゃん!?

おばあ:な、なんでいきなりこんな飛び切りのイケメンを連れてくるんだい!心臓が縮み上がったじゃないか!

葵:ええー?ばあちゃんが連れて来いって言ったんじゃないか

おばあ:だからって…!こんなの見たら寿命が延びる前に一回天に召されてしまうわよ!(奥に向かって)ちょっとじいさん!あんたの面(つら)見せな!小休止(しょうきゅうし)させとくれっ!

葵:じいちゃんをカンフル剤にすんな

おばあ:(遥に向かって)ちょ、ちょっと居間で待っててもらえるかい?40秒で支度するから!

葵:どっかで聞いたセリフだな

遥:…大丈夫ですよ、ゆっくりいらしてくださいね

おばあ:はぁぁぁ……!


0:10分後。


おばあ:お…お待たせしたね。やだね葵ったら…こんな素敵な人が来るってのに連絡もなしに…

葵:ばあちゃんもしかして…化粧してきた?口紅とか、塗ってるとこ初めて見たぞ…

おばあ:デリカシーの無い子だね!

遥:そうよ、葵。女性はいくつになっても女性なの、乙女心がわかってないわね

葵:乙女心って…

おばあ:中身までイケメンッ…!どうしましょう、こんなに心がトキメクのは何十年ぶりかしら

葵:ばあちゃん、隅でじいちゃんがいじけてるぞ

おばあ:(爺に向かって)なんでしょげてるの!あんたは私の酸素みたいなもんでしょうが!いなきゃ息も吸えないってのをそろそろ自覚しなっ!

遥:面白いおばあ様ね

葵:そう言ってくれると助かる

おばあ:ほんとにカッコいい人だねぇ…それにとっても綺麗だ

遥:…私でよかったでしょうか

おばあ:いいもなにも!こんなにカッコよくて綺麗な人を見たのは久々だよ。こんなばばあのワガママに付き合ってもらって悪かったわね

葵:無茶ぶりだって言う自覚はあったんだ

おばあ:それで?二人はいつから付き合ってるんだい?

葵:ん?

遥:え?

おばあ:あれ?付き合ってないのかい?わたしゃてっきり、葵がカッコいい恋人を連れてきたんだと思ってたよ

葵:ちょ、なんで

おばあ:だってわざわざ休日にこんなばばあの遊びに付き合ってくれるんだよ?愛が無きゃできないだろう

葵:あ…愛って……

遥:…………私のほうはとっくに、その気なんですけどねぇ

葵:えっ…

遥:でも葵ったら全然、そういう対象として見てくれなくて

おばあ:まぁ!

葵:ちょ、遥!?

遥:だからおばあ様からもアシストしてくれますか?

おばあ:もちろん!ちょっと葵?あんたこんないいお嬢さんを悲しませたら許さないからね!

葵:え、ちょ

遥:私、男じゃないですけど…男の子を宿すことはできると思うんですよね…イケメンなひ孫見せに来ますから、長生きしてくださいね!

おばあ:もちろん!女の子でも大歓迎!!100までうーんと長生きしてやるわ!

葵:ちょっ!……ええ…


0:1時間後。


遥:お邪魔しました

おばあ:またいつでも顔見せに来てね、私の延命のために!

遥:はい


0:玄関の戸を閉めた二人。


遥:んー!楽しかったねぇ。すごく明るいおばあ様ね

葵:お前な……リップサービスが過ぎるんじゃないか

遥:え?

葵:その気とか…ひ孫とか…今日は助かったけど…そういうのは

遥:あら、私本心しか話してないけど?

葵:え?

遥:……葵は鈍いよね

葵:えっ…だ、だってお前そんな素振り

遥:葵が気づかなかっただけだよ

葵:えぇ…?マジで…?

遥:んで?どーする?さっきの言葉…ただのリップサービスってことにする?

葵:…そんなことしたらばあちゃんに殺されるじゃん

遥:…その答え方はマイナス1万点かな

葵:……お前よりカッコよくなれる自信ないけど、いい?

遥:ふっ…いいよ、その分私が愛してあげるから

葵:お前ほんと…性別間違えて産まれてきたろ

遥:あら…じゃあついてるかどうか、葵が脱がせて確かめてみる?

葵:あーっもう!!…とりあえず、行くぞ

遥:…どこへ?ホテル?

葵:ちげーよ!約束のケーキだよバカっ!

遥:ああ…じゃあ初デートってことでいい?

葵:…いいからっ!とっとと行くぞ!

遥:…はい

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イケメン探し 3人用台本 ちぃねぇ @chiinee0207

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