春村神木とは

 春村神木とは。

 誰もが認めるほど普通の生徒であり、普通の美術部員であり、普通に普通を我が物にした普通の象徴であった。通も唸らせるほどに普通であった。

 それは言い過ぎている。

 普通であるが故に象徴とも思われてないし、通を自称するなんて奴は気づかずに普通に通り過ぎるだろう。

 普通であるが故に目立つものではない。

 だから、今みたいに急に自己紹介をしないと目を滑らせて次の話に行っちゃうからね。

 なんて冗談。

 ……じゃあ結局、なんでこんなに意気揚々かつ淡々と説明したのか。

 緻密で、膨大で、馬鹿みたいに丁寧な説明をされたらどう考えるのが正解か。

 そう。

 この事実には裏があるってことだよ。

 何が言いたいかと言うと、あまり目立ちたくないという事情があるということ。

 ある秘密を隠すためのに過ぎないということである。

 では何の為のカモフラージュなのか。

 皆さんお察しかもしれないが、ここでそれを聞かせよう。

 「ミーティングルーム」という単語に聞き覚えはあるだろうか。

 そこの棚に置いてある筒に願いを入れると、叶えてくれるという噂のアレである。

 そう……あれを運営しているのは自分である。

 特に名前のない活動なので、当然ながら組織名もない。なので、そろそろ欲しくなってきた。とりあえず仮で『裏生徒会』とでも名乗っておこう――。


 ……読書した後はあれだな、頭の中で今の状況をひたすらに記述しちゃうな。

 この感じなら一本ぐらい本が書けそうな……いや、舐めすぎか。

 と、白紙のキャンバスを前に、べらべらとやかましい脳内に苦笑いをしながらまたぼんやりと窓の外を見るのであった。

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