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 華々しく幕を開けた文化祭。

 そんな文化祭も終わる時は意外とあっさりもの……ではない。

 山を登って達成感に満たされた後に待っているのは、同じ景色の来た道をまた戻るという運命が待っている。

 ようは、閉会式を経てぱったりと終わるものじゃないということである。

 自分の尻は自分で拭けよ、ということである。お片付け~♪ お片付け~♪ ということである。

 なので、真の終わりはまだではあるが、この行事・イベントに一つの区切りをつけるのがでありだということである。


「これより文化祭閉会式を始めます」


 そんな儀礼を目の前にして、俺は今大量の汗を流していた。


「まずは校長先生からの挨拶です。校長先生お願いします」


 人間って汗こんなに出るんだ。え、鼻血?


「えー、皆さんは今回の文化祭どうだったでしょうか……」


 ……あ、鼻血じゃなかった、良かった。ティッシュ、ティッシュ――あーやべっ足の震え止まんな。


「ありがとうございました。それでは次に生徒会長からの挨拶です」


 喉が無限に乾く……さっきからずーっと唾を飲んでるのに、一瞬で渇いて水分を渇望してしまう。


「えー今回、生徒会長が体調不良でお休みなので、代わりに副会長の佐藤さんにお言葉を貰います。佐藤さんお願いします」


 名前を呼ばれて周りを見渡し、壇上に置いてあるマイクの前までゆっくり歩いていく。

 裸一貫で向かうのだ。

 光に照らされたステージの上、俺はただ目の前を真っ直ぐ見つめる。


 ……メモ帳まじでどこいったん?


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