「いや、なにしてんだ!」

「へぇ?」

 二人で飲み物を買い、席に着いた途端急に穏やかな空気が流れ始めたと思ったら、次の瞬間には三十分も経っていた。

「なんかこの席、ちょうど日が当たって気持ちいいな……とか思ってたら時間が吹き飛んだんだけど、夏希なんかしたか?」

「いやー? あたしもなんだかんだ、やらないといけないことはちゃんとするタイプだけど、なんかここ居心地いいんだよね。居ついちゃう何かがここにはある!」

「いや、ある! じゃないんだよ。早く行かないと」

「だね、よし行こう!」

 それから、俺達は二年二組に行った後にお饅頭とお茶を飲みながら三十分が経過し、三年三組に行ったときなんて、パズルやテーブルゲームにのめり込んでしまったせいで一時間が経過してしまったのであった。

「なー夏希」

「なに」

「なんか俺達もしかして、トラブルに乗じてただ文化祭楽しんでいるだけなんじゃないのか」

「……確かに」

 恐るべきことに気づいてしまったのかもしれない……。

「というか、あと二時間で文化祭一日目が終わるな」

「そうなると、今日はもう止めた方がいいかも?」

「うーん……確かにこれ以上仕事を放棄するのはまずいか。じゃあ今日はここまでにして自分の持ち場に戻ろうか」

「……! 戻ろう! よーし、今すぐ戻るぞー!」

「……? 分かってるよ、解散だ解散」

 こうして、一日目の文化祭は定時の時刻を迎え、明日に備えて早めの解散となったのであった。


 そして、帰る直前。

 俺は生徒会室の前で先生に呼び止められた。

 俺は一抹の不安を感じた。

 だが、当然そこで無視して帰るわけにもいかないので話を聞くのだが、そんな俺の予感は的中してしまうのだった。


「生徒会長は体調不良で帰ったから、明日の閉会式お前頼んだ」


 先生はそう言って返事も聞かずに離れていく。

 俺の脳内では消化しきれず、ただ頭の中でぐるぐると「そうなった場合どうなるんだろう」という言葉が往来するのみであった。

 そして、具体的に何かを考えられないほどに考えながら、通学路を歩き電車に乗り自宅へと帰るのだった。

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