キーンコーンカーンコーン。

 放課後のチャイムが鳴り響く。

 今日は授業も部活もないし、明日が本番なのでその準備のため、いつもより遅くまで学校を開ける日らしい。

 そのせいか、窓から昇降口の方を見てみても、ぼちぼち帰る人がいるぐらいである。

 それを見るに、今日は結構な数の人が居残りで作業をするという意思を感じる。


 そんな放課後の始まりに、ぼくは何をしているのかというと、メイド服を着ていることを一旦忘れて、一足先に文化祭の雰囲気楽しむという名目の校舎散策にしゃれこんでいた。

 だがしかし、それは今ついに、終わりを迎えなければならなくなってしまった。

 それはなぜかというと、が原因である。

 製菓部が作っていたらしい試作のクッキーやチョコ、サッカー部が作っていたサッカーボールを模したおにぎり、バスケ部が作っていたバスケットボール柄のたこ焼きなどなど……色んな部活が出す予定の試作品が袋に盛り沢山入っていた。

 そして、いつどのタイミングでもらったのか分からないけど、いつの間にか頭にくま耳のカチューシャが乗っていて、ハナメガネもかけていた。そして、背中には手作りのちいさな天使っぽいハネが生えていた。


 流石にここまで色んなアクセサリーを付けていたら、下手するとメイド服を着ていることすら気づかれないのではないかとすら思ってしまう。

 というか,メイド服を着ているだけでも目立って色んな物を手渡されていたのに、いつの間にか付けられたパーティーグッズのせいで余計面白がられたせいで、よりもっと渡してきていた気がする。

 試作品をくれるのは嬉しいけど、さすがにみんな大盤振る舞いすぎてぼくは今少し引いている。

 まるで、餌やりの時にいつもの百倍の量の餌を、お皿が埋まるぐらい盛られてドン引きしている猫ちゃんの動画みたいに怯えちゃった。

 紙袋も重すぎて、持ち手の部分が指の第二関節部分にめり込んで食い込み、真っ赤になっているのが想像にたやすい。

 というかとても手が痛い。早く置きたい。

 ということで、指や手が引きちぎれてしまわぬうちにと駆け足で、自分達の荷物を置いている仮の物置部屋へと早急に向かうことにする。

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