華厳原みずきは着飾られる
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それを見た時、ぼくは本当になにが起こったかを理解できなかった。
なぜならば、一人がサマーソルトキックの要領で宙を舞い、その下をくぐるように猛スピードでスライディングする人が同時に存在するその光景を、ぼくの脳は現実と認識してくれなかった。
それからしばらくして、その二人が放心状態でぐったりとしていたところに、眼鏡をかけたセンター分けの男の子が焦った顔を携えながら大急ぎで近づいてきたことを覚えている。
彼は二人の安否を確認するや否や、一人の男の子が踏みつけてうち履きに食い込んでしまったアルミ缶と思しきものを回収し、それをじっくりと観てほっと胸を撫で下ろしていた。
そんな光景を見て、ぼくはどうしても話しかけたくなってしまった。
これは何となくの予感だけど、でも絶対に逃してはいけない「数奇な運命」が視線の先にあるんだろうと思ってしまったのだ。
そして、この変な出会いがこれからの高校生活において、重要な意味を及ぼすことをぼくはまだ知らなかったのだ。
その当時、多分彼らもぼくも、そして、神様だってそんなこと予想してなかったと思うのだ。
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