副会長、佐藤千歳
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これは決してさぼりじゃない。
金髪で決して見てくれが良いとは言えない俺に、何の説得力もないことは分かっている。
だけど、それに変えても休息は大事だ。何をするにしても、メリハリをつけることこそが一番大事なテクニックだと言えるだろう。
そんなことを、さっき自販機で買ったよく知らないメーカーのスポドリ片手に、昇降口の前の小さな塀に寄っかかって考える。
ペットボトルに口を付けて傾けると、他のメーカーよりもいまいち薄い甘みの水が喉を流れ落ちていく。喉で冷たさを感じる。
そんな中、俺の視界に飛び込んできたのは、溢れかえって入りきらなくなった缶専用のゴミ箱だった。
あれ、まだゴミ回収に来てないのか。
そう思った次の瞬間だった。
自販機の近くを歩いている男子生徒に目が向いた。その男子生徒は視線をスマホに落としたまま、特に前を警戒せずに歩いていたのだ。
これを見て、生徒会副会長の立場的に注意しないといけないのだろう。
しかし、それだけだった俺は注意しない。なぜなら、そんなことをいちいち注意していたら、街中を歩けなくなってしまうからだ。そして、注意された方もいい気分がしない。まぁ本当は注意した方がいいんだろうけど、めんどくさいからな。
しかし、今回ばかりは声を掛けなければいけない。
だって、目の前にはポイ捨てされた空き缶が転がっているからである。
このままだと彼はあれに足を取られて転倒、最悪の場合、そのまま後頭部を打ち付けて搬送、そして、一番最悪のケースが思い浮かんだ。
それに加えて今、もっと最悪の状況であることもまた同時に分かってしまった。
彼は今、イヤホンをしている。
なので、ここから呼びかけても最悪気づかないという可能性が見えてしまった。
それを理解した瞬間――俺は駆けだした。
これは間に合わないのかもしれない。そう思ってしまうぐらいには俺と彼の間に距離があった。
しかし、そんなことを考えている暇があったら、もっと地面を蹴った方がいい。
俺は彼の足元めがけて、ジャンプスライディングをする。
間に合え、間に合え、間に合え! これは元サッカー部の意地だ!
しかし、残酷なことに気づいた時にはもう彼の体は手遅れなほどに傾いていた。
俺はただ目の前で倒れていく彼を見つめることしかできなかった。
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