第12話 のんびり観光

朝食を急いで食べて、荷物をまとめ、何とか11時のチェックアウトに間に合った。


温泉街を少し散策する。


観光客らしき人々で賑わっていて、楽しそうな雰囲気に包まれる。


一軒の和菓子屋ののぼりが目についた。

メインストリートにはあるが、目立たない小さな和菓子屋だった。


その店先に写真付きののぼり。

猫の顔の形の小さな饅頭。


可愛い、、。


つい立ち止まって見つめていると、


「入ってみる?」


ニコルが促してくれる。


「うん。」


5種類ある猫の顔。

どれも可愛い。

中に入っているあんも全て違う。


じっくり選んで、俺はロシアンブルーにした。黒ごまの練り込まれたグレーの生地に、こしあんが入っている。表面に描かれたライトブルーの猫の目が、いかにもロシアンブルーだ。


ニコルは黒猫を選んだ。竹炭の練り込まれた生地に黒糖あんが入っている。表面に描かれた猫の目は黄色。


可愛いだけじゃなく、生地もふわふわで美味しいし、中のあんも上品で本格的な味わいだった。小さな饅頭なのに、1つで大満足。


それから土産物屋などをぶらぶらと見て回る。


俺は家族にレトルトカレーをお土産に買った。名物の牛肉の塊と、玉ねぎをまるまる1個そのままの形で煮込んだカレー。レトルトでもまぁまぁの値段だ。


ニコルは水うちわという物を買っていた。和紙を貼って、ニスを塗って仕上げてあるので、見た目が本当に美しい。透明感がある。


でも、レトルトカレーとは比べ物にならないほどの値段。高級品だ。


初夏なので過ごしやすい方だと思うけれど、今日は日差しが強くて額に汗が滲む。


そろそろホテルの駐車場の時間切れが迫っていたので、車を出しに戻った。


そこから車で山道を登って行った。


「ニコル、どこへ行くの?」


運転するニコルの横顔を見つめる。

ニコルはチラッとこちらを見ると、


「ちょっと付き合ってくれる?

子供の頃に家族と行ったところなんだけど、久しぶりに行ってみたくて、、。」



つづく

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