第10話 初めての、、

「じゃあ、後でね。」


俺の首すじをひと通り味わうと、ニコルは颯爽と客室を出て行った。


「はぁー。どうしよう、、。」


とにかく仕事は終わらせなければ、、と、重くて扱いづらい大きな掃除機を引きずって来て、部屋のコンセントへ差す。


床に満遍なく掃除機をかけ、客室の窓を閉めて電気を消す。


廊下へ出ると、荷物を全て持ってエレベーターに乗った。


地下へ降りると、ゴミの収集場所でゴミを分別して、事務所へ入る。


もうニコルの姿は無い。


今日は車で出かけるとの事で、レンタカーを借りに行っているはずだ。


ひと通り残務を済ませて、ホテルの裏の小さな公園へ行く。


都会にある公園は、うちの近くの大きな公園とは違ってとても小さい。誰も公園の中には居なかった。


一つだけあるベンチへ座る。一日座る暇も無く働いた体は疲れていて、ベンチに座るだけでご褒美のようだ。


するとメタリックなブルーの軽自動車が公園に横付けされた。軽自動車と言っても、今人気の車種でお洒落な雰囲気。


車の中からニコルが出て来る。


「充生、お疲れ様!」


「ニコルもお疲れ様。車ありがとう。」


「うん。」


ニコルは俺の手から着替えなどが入ったかばんを受け取って、車のトランクへ入れる。


モデルをしているだけあってか、動きが綺麗なんだよな。


ニコルとこんなふうになる前から、俺は仕事でニコルと同じフロアになると、ついその綺麗な動きを目で追ってしまっていたんだ。


「どうしたの?」


ニコルがじっと見ている俺の視線に気づいた。


「えっと、、カッコいいなぁって思って見てた。」


正直に答えた。顔が赤らむのが自分でも分かって嫌になる。


「充生は本当に可愛いね。、、俺はもう充生を離せないよ。」


「ニコル、、。」


もうどこへも行かずに、このまま2人で抱き合いたい。


やりたいのかやりたくないのか、自分の気持ちが複雑に入れ替わるので、もう流れに身を任せるしかない。


「さ、行こうか。充生。」


「うん。」


俺たちはそれから車で2時間程かけて移動して、ある温泉町のホテルにチェックインしていた。


平日なのに混んでいて、ホテルの駐車場が満車になっていた。提携している近くのパーキングへニコルが車を停めに行ってくれた。


夕食は途中のサービスエリアで簡単に済ませていたので、ホテルの部屋へ荷物を置いたら、すぐに大浴場へ行ってみる事にした。


脱衣場ではなるべくニコルの方を見ないようにして服を脱ぎ、素早くタオルを腰に巻いた。


大浴場は黒を基調にしたシックな雰囲気で、室内の大きな丸い浴槽と、ガラス窓の向こうの大きな丸い露天風呂の浴槽が繋がるように配置されていて、どうやらひょうたんの形を模しているようだった。


洗い場の天井にも、ひょうたん型の電球が点在していて可愛らしい。


ニコルと隣り合って、髪や身体を洗う。


同性同士のカップルは、温泉で一緒にお風呂に入れるのはメリットだけれど、付き合いたての、まだそうゆう事をしていないカップルにとっては複雑な気持ちにさいなまれる瞬間であることに間違いない。


チラチラと視界に入る、ニコルの長い手足。


ひょうたん型電球は、肌を艶かしく美しく見せるように光の具合を調整されているのではないかと思ってしまう。


鏡に映る自分の肌も、妙に艶かしい。

俺の乳首、こんなきれいなピンク色だったっけ??


湯船に浸かって、お互いの体が見えなくなってやっと少しリラックス出来た。


いい湯加減だ。


もう窓の外は真っ暗だけれど、天井に埋め込まれた小さな豆電球くらいのスポットライトがお湯の表面を照らしているので、天井に水面がユラユラと反射していて綺麗だ。


他にも数人お客が居るので、あまり会話はしないで客室へ引き上げた。


客室の扉を閉めると、背後からニコルの体が俺を包む。


「もう我慢出来ない。充生、、。」


ニコルは俺を正面に向かせると、すぐに唇を重ねる。


もう慣れ親しんだニコルの唇が、俺の唇を押し開いて温かい舌が入って来る。


舌が絡まり合う。


もう慣れ親しんだ舌の動き。


チュッ、チュクッ、はぁ、、チュッ、あ、、。


静かな客室に俺たちの息づかいとお互いの唇を求め合う音だけが響く。


「風呂場で襲いたくてたまらなかった、、。」


「ニコル、、。」


俺を見つめるニコルの熱い視線。


いつのまにかダブルベットの前に来ていて、ニコルは俺が着ていたホテルのガウンの紐を解いた。


すぐにガウンは脱がされる。


俺もニコルのガウンの紐を解いて、その逞しい体を露わにした。


ベットに乗り上げる。ニコルが上に覆い被さって来た。


俺の唇に合わさっていたニコルの唇が離れて、俺の首すじへ移動して優しくついばんでくる。


ゾクゾクと身体中が反応してしまう。


俺のモノが反応して立ち上がるのをニコルは優しく握って先端に指を這わせる。すぐに滲みでる液体で全体を大きくしごかれる。


「あっ、はぁっ、、あっ、、。」


もう何も考えられない。


自分では体も声もコントロール出来ない。


「ニコルっ!あ、、あ、はぁっ!」


一度に解放される。イッてしまった。


「充生、挿れてもいい?大丈夫?」


「うん。大丈夫。」


潤滑剤をたっぷり指に纏わせて、俺の中へ差し入れる。ニコルの細くて長い指が俺の中で動いている。


自分でするよりも奥へ深く入って来て、何かを探すように思慮深く探っている。


「あぁっ!ちょっと、、ニコル!」


気持ちいいポイントを執拗に刺激される。


「ニコル!あ!あぁ!!待って!あ!」


自分でやってみた時も、少しずつ気持ち良くなっていたけれど、ニコルにされると怖くなるくらい体が反応して止められない。


俺の全身が脱力したところで、ニコルは自分のモノにも潤滑剤をたっぷり塗って、グッと俺の中へ入って来た。


初めは圧迫感。


身体中がこわばる。


するとニコルが体を前に倒して、俺の唇にキスをしてくれた。おでこと頰にも優しく唇が触れた。


そこで更にグッと深く入って来る。


そこからゆっくり抜き差しが始まって、やがて何が何やら分からなくなった。何度か体位を変えて夢中になってお互いがお互いを貪りあう。


2人ともやがて果てて、クタクタになって絡まり合ったままそのまま眠ってしまった。


初めてのセックスは、もうそれ無しでは生きていけないと思う程に気持ち良くて、無我夢中のままに終わった。




つづく


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