第4話 キス
「ニ、、ニコル?!!」
ホテルの客室内にあるユニットバス。
時間に追われて焦りながらも、浴槽の中に上半身ごと突っ込んで、丁寧にスポンジを使って浴槽の壁を洗っていると、不意に誰か入って来て、扉を閉めて鍵をかけた。
慌てて身を起こす。
そこに居たのはやはりニコルで、相変わらずの彫りの深い綺麗な顔。くっきりとした二重瞼に黒くて大きな瞳が妖しく光っていた。
「松田くん、ちよっといい?」
「な、何?」
ニコルは風呂桶の前に屈んでいた俺の肩を掴んで立ち上がらせると、俺の背中を壁に押しつけて、俺のつけているマスクを外して来た。
そして、俺の顎に手を掛けて顔を近づけてくる。
俺の脳みそは驚きと何やら分からない焦りとでパニックだ。
「If you want、、。(君も望むなら)」
少し懇願するような切ない表情で、ニコルが俺の顔を覗き込みながら呟くように囁いた。
「I want。(僕も望んでる)」
普段、流暢な日本語を操るニコルが何故か英語で、俺の意志を確認して来た。
俺も何故か英語で返事を返した。
え?俺、I want って言っちゃった!
そう思った時には、ニコルの顔がどんどん近づいて来て、俺の唇にニコルの唇が重なっていた。
わー!!何をしちゃってるんだ!俺は!!
ニコルの唇は柔らかくて、俺の唇に優しく重なったと思ったら、角度を変えて何度も何度もついばむように俺の唇を味わってくる。
俺の頭に回されていたニコルの左手が、俺の首元を優しくなでるように下がって来て、しっかりと俺の頭が逃げないように固定すると、更に強く唇をついばんできた。
「あ、ニ、、ニコル、、んっ、、」
「可愛いよ、、、松田くん。」
その時、パッと目が覚めた。
ゆ、夢かぁ。
何故かちょっと気持ちが沈む。
変な夢見ちゃったじゃないかぁ!!
今日も仕事。ニコルとどんな顔で会えばいいんだよー!どうか顔を合わせませんように!!
つづく
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