犬の世界 3人バージョン 3人用台本

ちぃねぇ

第1話 犬の世界

【設定】

ジョン:一番年上だが発言に力のないドーベルマン。現状に不満を抱いている。

タッキー:2番目に飼われたチワワ。軟派な性格を装っているが実は腹黒く3匹の中で一番頭が回る。

カナ:3番目に飼われたポメラニアン。飼い主ラブ。

少年&お母さん:3匹の飼い主。兼ね役でお願いします。




ジョン:いいかお前ら、俺達は箱庭の鳥だ。自由なように見せかけて実は外の世界に出ることを制限された可哀そうな生き物だ

タッキー:僕たち犬だよ?

ジョン:そこは比喩だよ

タッキー:比喩遣う意味あった?

カナ:つっこんじゃだめよタッキー。おやっさん、もう歳なんだから。ボケが始まってんのよボケが

ジョン:誰がボケたって?

カナ:あら、まだ耳はいいのね

ジョン:まだもなにも!俺はまだ若いだろうが!

タッキー:おやっさん、今年いくつだっけ?

ジョン:ピチピチの8歳だが?

タッキー:バリバリのシニア世代じゃないか

カナ:もう還暦?

ジョン:人間の歳に置き換えるんじゃない!

タッキー:…んで?おやっさんは今の生活に不満があるの?

カナ:信じらんない。あんなに拓也君に愛されてどんな不満があるって言うのよ

ジョン:不満だらけだ

タッキー:どこが

ジョン:まず第一に!散歩が短い!

タッキー:えー?

カナ:そうかなぁ?私むしろ、長すぎるくらいだと思うんだけど

ジョン:小型犬のお前らにはわかるまい…ドーベルマンが!一日30分の散歩で納得するわけなかろうが!大体にして俺の次に飼う犬がチワワって!なんでだよ!しかも雄!そこは俺の嫁さん候補とか連れて来いよ

タッキー:えぇ~?おやっさん、僕のことそんな風に受け入れたの…?

カナ:ちょっと!いくら私が可愛らしい雌(めす)だからって、飛び掛かってきたら容赦しないわよ!

タッキー:おやっさんがモテないのは飼育環境のせいじゃないと思うよ?だってほら、僕散歩中にガールフレンド3匹作ったし

カナ:私だってボーイフレンド5匹いるわよ?まぁ?拓也君ほど好きな子はいないんだけどねぇ~

ジョン:惚気んな!自慢すんな!飼い主ラブ止めろシャラップ!

タッキー:一番うるさいのおやっさんだと思うけど

カナ:それに、おやっさんもう歳なんだから30分の散歩時間って適切なんじゃない?

タッキー:そういえばこの間、少し息切れしてなかった?

ジョン:す、するわけないだろう!ドーベルマンだぞ俺は!な、何言ってんだぁっ!?

タッキー:怪しい

カナ:怪しいわね

ジョン:だ、第二に!飼い主の俺達に対する理解力の無さ!俺はもう我慢ならない!

タッキー:話変えた

カナ:変えたわね

ジョン:俺らがいくら吠えたって「いい子だから静かにしてね~」と受け流すあの態度!そうじゃない、そうじゃないだろう!俺は、お前の服が裏表逆だって教えてやってるのに!いい子だから教えてやってるのに!

タッキー:そういう時は服のタグで遊べばいいじゃん。気づいてくれるよ?

カナ:人間に犬語がわかるわけないじゃんね。吠えてうるさいって怒られるのがオチよ

タッキー:おやっさんは人間に多くを求めすぎなんだよ。もともと違う種族なんだから、分かち合えない部分だってあるよそりゃ。8年も生きてきてまだ適応できてないの、正直どうかと思うよ?

カナ:私まだこのおうちに来て3年だけど、コミュニケーション能力おやっさんに負ける気しないわ

ジョン:だ、第三の不満だ!これはもう重罪だ!心して聞け

タッキー:また変えた

カナ:すーぐ話題変えるんだから

ジョン:あいつら!俺たちを虐待するじゃないか!

タッキー:…虐待?

カナ:いつ?

タッキー:カナ、覚えある?

カナ:まさか!

ジョン:この間も!俺がいるのに気づかずに扉閉めてベランダに放置して!

タッキー:…ああ。掃除機の音にビビったおやっさんがカーテンの隙間から脱走したあれか

カナ:まさかカーテンすり抜けてベランダに出てるなんて、私たちですらわかんなかったわよ

ジョン:おかげで俺は熱中症になりかけたんだぞ!

タッキー:勝手に逃げたくせに

カナ:あの時拓也君がどれだけおやっさんのこと探したか知らないの?あんなに心配させておいて…

ジョン:う…うるさいっ!!とにかく俺はもうこんな生活は嫌なんだ!

カナ:なによ、じゃあ家出でもするつもり?

タッキー:こんな炎天下の中?10分外にいただけで熱中症になりかけた老犬のおやっさんが?

ジョン:老犬言うなっ!大体、お前らも虐待を受けてるじゃないか!

タッキー:ええ?

カナ:だからいつよ

ジョン:ついこの間も!タッキー、お前拓也に尻尾踏まれて「ギャン」って叫んでいただろう

タッキー:あ~…まあそんなこともあったような

ジョン:カナだって!ブラッシングが強すぎて逃げ出したじゃないか

カナ:あ、あれはたまたまブラシに毛が絡まっただけで

ジョン:お前らは心が広すぎるんだ!あ~それか…記憶力の差か?ドーベルマンの頭脳にチワワやポメラニアンが適うわけねぇわな?

カナ:はぁ?

ジョン:いいよなぁお前らは。嫌なことされてもすーぐに忘れられるもんなぁ?俺なんかさぁ?賢すぎて嫌なこともぜーんぜん忘れらんねぇわけ

タッキー:…おやっさんにとって、ここでの生活は不満だらけなの?

ジョン:ああ不満だ!短すぎる散歩も度重なるおっちょこちょいで虐待されるのももう御免だぜ!

カナ:ねえタッキー、この老犬しめていい?

ジョン:ああ?やるってか?いいぜ、ポメラニアン一匹、俺の相手じゃねぇよ

タッキー:…じゃあ2匹相手だったらどう?

ジョン:は?

タッキー:そんなに偉いドーベルマン様なら僕ら二人がかりでも余裕で相手してくれるよね?

ジョン:お前…本気か?

タッキー:本気だよ。僕たち小型犬だけどまだ若いからね、8歳のドーベルマン相手ならいい勝負になるんじゃない?

ジョン:な!…お前ら2対1とか卑怯だろ!

カナ:うっさいわよ、黙れじじい!

ジョン:じ、じじい!

タッキー:卑怯?どこが?犬種の力の差は歴然なんだから、これくらいいいでしょ?僕の爪、最近切ってもらえてなくて結構伸びてるんだよねぇ~ほらほら見てよ

ジョン:な!

カナ:前からずっとあんたのその偉そうな態度、気に入らなかったのよ。いい機会だわ、あんたの尻尾、今すぐ噛みちぎってやるんだからっ

ジョン:ひっ…!

タッキー:あーあ、可哀そうに尻尾丸めちゃって…震えてるの?まさか小型犬相手に?なわけないよね?

ジョン:な、わけ

タッキー:…ねえ見てよ、カナの犬歯。鋭いでしょ?あれで噛まれたらきっと…痛いよぉ?それにほら、ポメラニアンっていざって時俊敏なんだよねぇ

ジョン:あ…あ…

タッキー:僕の爪も、食い込んだら痛そうだよねぇ…?

ジョン:た、助けて…

タッキー:ねぇ?おやっさん。一度だけチャンスをあげる。こういう時、なんて言うんだっけ?大丈夫、僕たちおやっさんの犬語ちゃぁんと理解できるから、言ってごらん?

ジョン:す、すびばせんでじだ…

タッキー:カナ、犬歯しまって。そんな顔拓也君が見たらどん引いちゃうよ

カナ:…命拾いしたな、じじい

ジョン:小型犬怖い小型犬怖い


0:尻尾を丸め縮こまるジョンを見ていたタッキー、ふと言葉を漏らす。


タッキー:……まあ確かに、おやっさんの不満もわからないではない

ジョン:え?

カナ:タッキー?

タッキー:確かにおやつを忘れることもあるし、餌も買い置き切らすこともあるし…彼らも完璧じゃないから僕らに不利益に動くこともある。おやっさんはそれをちょっと大げさに誇張しただけなのかな?

ジョン:そ…そうなんです!僕が言いたかったのはそういう事なんです!

カナ:口調変わってるわよ、あんた

タッキー:それで?不満を持っているおやっさんは、具体的に一体何をするつもり?お気に入りのソファをめためたに引き裂くとか?

ジョン:そ、そこまで怖いことは考えておりません

タッキー:やだなぁおやっさん、いつもの話し方に戻ってよ、おやっさんに敬語は似合わないよ?

ジョン:あ、ええ、はい、そうです…だ?

カナ:ぐちゃぐちゃになってるわよ

タッキー:で?おやっさんは不満を持ってるにもかかわらず何もする気はないと?

ジョン:そ、そんなことはないぞ…?

カナ:お、戻った?

タッキー:じゃあどうする気?

ジョン:えっと…奴らにちょっとだけ反省してもらおうかと…

カナ:反省?

タッキー:具体的には?

ジョン:お、俺達の扱いをもっと丁重にしてもらう…というか、俺達の価値を高める…というか

タッキー:ふむ。何かアイディアあるの?

ジョン:例えば…わざと餌を食べ残して心配をかけるとか

カナ:はぁ?バカじゃないの?そんなことすれば

タッキー:いいねそれ!

カナ:…はぁ?

タッキー:おやっさん、ナイスな考えだよ!さすがドーベルマン!僕には全然思いつかなかった斬新なアイディアだよ!

ジョン:え?そ、そうか?

タッキー:うんうん、すごいよ!きっと拓也君もお母さんもおやっさんを心配して、この間熱中症になりかけたせいだわ、私のせいだわっておやっさんのことものすごく心配してくれるはずだよ!

ジョン:そ…そうだろう!?お前もそう思うだろう!?

タッキー:うんうん!早速今日からご飯を食べ残してみなよ!善は急げって言うしさ!

ジョン:わ、わかった!二人とも見てろよっ!


0:意気込むジョン退場。


カナ:ちょっとタッキー、あんたなんであんなこと言ったのよ。ご飯をわざと食べ残すなんて…そんなことしたら…

タッキー:僕ね、ちょっと本気で怒ってるんだよねぇ。あんなに愛されてるのにそれを当たり前だと思ってるおやっさんの態度。飼い主に巡り合って大事にしてもらえるって相当レアな幸せなことなのにさ

カナ:あんたまさか…わざと?

タッキー:僕もカナと一緒でおやっさんの態度は前から気になってたし…お灸を添えてあげようかなって

カナ:チワワ怖いチワワ怖い


0:数日後(タッキー役の方が拓也、カナ役の方が母を兼ねてください)


拓也:お母さん!絶対変だって!ジョンのやつ、もう三日もご飯を残してるんだ!あんなに食いしん坊のジョンが!ジョンがぁ!

母:そうね、一度病院に連れて行きましょう。拓也、ジョンの確保お願い

拓也:任せて!ほぅらジョン、リードだよぉ、散歩行こうね、散歩~

ジョン:わん!

カナ:ご愁傷様

タッキー:いってらっしゃい、おやっさん(黒い笑顔)

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犬の世界 3人バージョン 3人用台本 ちぃねぇ @chiinee0207

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