第5話

地下鉄メトロに入ったネクは、ライトに照らされた構内を眺める。

今までも地下を見たことはあったが、これだけの空間が拡がっていることに驚いた。

しかも都市同士をつないでいたということは、目に見える以上に、この空間は先に拡がって続いているのだ。

ロボットの大きさ的には少々手狭だが、移動する分には支障はない。

じっくりと眺めていきたい、とネクは考えていたが、聞こえてきた金属音や銃声にその意識はかき消される。



『入ってすぐなのに、もう戦闘が』

『ええ、ネク。もうちょっと進むと、ドローンで溢れかえっているわ』


先行していたシェフィルがネクに近づき、ネクの呟きに返事をする。

その言葉にネクは首肯し移動すると……暫定的に築かれた前線拠点には、既にいくつものドローン……第一次機体ベーシックの残骸が転がっていた。



『しかも、こんなに』

『第一次機体がこれだけいるってことは、もう第二次機体スタンダード……いえ、第三次機体アドバンスドも間違いなく居るわね』


ネクたちは構内を降り、線路へと向かった。

第一次機体の相手は駆け出しやブロンズランクが相手をする。

シルバーランクになったネクたちは、格上である第二次機体や第三次機体……そして、潜んでいる『機母マザーウィル』を討伐しなければならない。





ガガガガガガガガガガガ――――ッ



『くそっ!撃っても撃っても出てきやがる!』

『シェフィル!距離121ヤード!グリッドCの4!小銃ライフル持ちの第二次機体!』

『了解!……対象撃破タンゴダウン!』

『こっちの銃は冷却中だ!援護カバーを頼む!』



線路の先、途中で枝分かれした場所では激戦が繰り広げられていた。

シルバーランク以上の冒険者らが第一次機体や第二次機体、防弾盾バリスティックシールドを床に置いて防壁とし、奥よりやってくるドローンたちを食い止めている。

設置された軽機関銃ガトリングが火を噴き、簡易剣スクラップソードを構えて突っ込んでくる第一次機体を穴だらけに変え、盾を持つ第二次機体を溶かしていく。

ネクたちもその戦線に加わり、敵の後方から狙撃してくる、狙撃手スナイパー型のドローンを中心に倒していた。

今はこちらの優勢のようだが、しかしドローンの数が多く、前線を押し上げることは中々できていない。



『ちっ、こりゃ誰か精鋭命知らずが奥に突っ込まないとだめか……?』


冒険者の一人がそうぼやいた時だった……軽機関銃を握っていた冒険者の機体が、ガァン!と音を上げて後方へ吹っ飛ぶ。

『狙撃だ!』と誰かが叫ぶが、それは違うとネクは思った。

狙撃手型のドローンは見つけ次第シェフィルが撃ち倒している。

しかも狙撃銃では、中量機体を大きくのけ反らせることはできても、吹き飛ばすには火力パワーが足りない。


出来るとするならば、第二次機体では持たないような高性能な武器を持ち、そして、それで狙撃が行えるほどの演算能力を持つ敵。




第三次機体アドバンスド―――!』


ネクの言葉に答える様に、まるで騎士が持つ槍のように滑腔砲タンクキャノンを脇に抱えた第三次機体が、ドローンの群れの奥からこちらに向かいやってきた。

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