第4話

『いこう、シェフィル』

『ええ、ネク』


ネクとシェフィル、そして冒険者たちは互いに声を掛け合い、ロボットや武器類の最終点検を行っていた。

だが経験の浅い者を筆頭に、幾人かが神経質そうに銃器の弾薬を確認したり、装備の稼働を検査している。

しかし、それも無理もない話だと、誰もが思った。

ギルド長より発令されたのは、冒険者全員参加の『機母マザーウィル』討伐命令。

さらには、エルフであるウェッブ議員の署名で、今まで出たことのない緊急事態宣言エマージェンシーまで発令されている。

しかも従前のように、綿密な打ち合わせや会議を行い、拠点設営や役割分担を整えたそれではない突発的かつ、地下鉄メトロという慣れない場所での戦いなのだ。



「…………」


ウェッブ議員はメトロの入り口付近に設けられた前線指令基地で、冒険者ギルド長や、市場を管理する商人ギルドの代表と話をしていたが、不意に、シェフィルが乗る白く細い機体へと目を向ける。

当初こそ、ウェッブ議員は退職届の提出を理由にシェフィルの出撃を認めなかったが、ドローンがどれだけの規模を持つか不明な以上、一人でも多くの戦力が必要である状況であり、確かな実力を持つシェフィルの不参加は都市を危険にさらす行為である、とギルド長に押し切られた形だ。

彼の表情には不安の色が強く出ているが、シェフィルはウェッブ議員には一瞥もくれず、意識を地下鉄へと向けていた。



『ネク。俺たち守備隊は……もし、ドローンが地下鉄から湧き出たときに対処することになっている。一緒に行くことはできない』

『イズマさん……もちろんです、これは冒険者の仕事ですからね』


イズマがネクに話しかける。



『しかし、ネクも重量機体ヘビーアーマーに乗っていたのか』

『ええ、まあ……色々とカスタマイズしてはいますが』

『そうだな、確かに守備隊の機体よりも細身スリムだ。装甲を削っているのか?』

『そうですね、チェスに色々と改造カスタマイズしてもらって……とっておきの切り札もあるんですよ』

『ほう』


そうして少し会話をしている間に、作戦決行の時刻が来たようだ。

高ランク冒険者が、駆け出し冒険者らに檄を飛ばし、続々と冒険者の乗るロボットたちが地下鉄の中へ入っていく。



『時間ですね……行ってきます、イズマさん』

『ああ。

 すまないな、ネク。頼んだ』


イズマに見送られ、ネクはシェフィルと合流して地下鉄にできた穴へと入る。

太陽の光は遮られ、周囲は暗闇に閉ざされていた。

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