第3話

「ネク!」

「イズマさん、無事でしたか!」

「ああ、守備隊を舐めるなよ!」


ドローンが現れたのは、十時通りにある市場だった。

ロボットに乗ったネクやシェフィル、そして冒険者たちが駆け付けたときには、既に都市の守備隊により討伐されていた。

市場の露店は破壊され、建物も一部が崩壊し負傷者も多数出ているようだが、幸いにも死者はいないらしい。

ギルド職員により3機分ある残骸を検められ、いずれも第一次機体ベーシックであることが告げられる。



「それで……ドローンは、ここから来たのか」

「あ、ああ、そうだ……」


冒険者ギルド長が、市場でドローンの出現を目撃した市民から話を聞いている。

市民は頷くが、視線はチラチラと、ギルド長の隣にいるウェッブ議員に向けられていた。

彼も現場確認のためにここにやってきたのだ。

市民からすれば、一生で何度見られるかもわからないエルフの姿に興味津々といった様子だったが、しかしウェッブ議員は渋面をつくり、市民の示した場所へ目を向けていた。

そこは建物の地下だった。

建物は随分と年季が入っており、あちこちに補修や修繕の跡がある。

聞けば、かつての大戦の前より建てられたものらしい。

ドローンが出てきた場所はそこで、大穴が開いていたが、人間が出入りするための階段も見受けられた。



「……この建物の、この場所は……」

「まさか、地下鉄メトロの入り口?」


ウェッブ議員が何か言うよりも先に、ネクが口に出す。

先日、廃墟で見つけたものとそっくりだった。

ウェッブ議員は「知っているのか」と呟いた後、頷いた。



「地下鉄は都市の間を結ぶ巨大な空間になっている。

 大戦の際には攻撃の対象となり、ほぼすべての地下鉄は破壊されるか、封鎖されていたはずだが……」

「まさか、この地下鉄は繋がっているの?!廃墟にある出入口と!」


シェフィルが驚愕の声を上げる。

そして事の重大さに、ネクや、ギルド長、そして何人かの冒険者は愕然とした表情を浮かべた。


つまり、廃墟とこの都市を繋ぐ通路が地下に走っているのだ。

しかも、そこからドローンが現れた。

既にドローンはこの空間に気が付き、そして先遣隊第一次機体を送るほどに成長している。




「……いる、な、間違いない」


ギルド長が乾いた声を上げた。



「この都市の地下に、『機母マザーウィル』がいる。

 やつらに巣窟になっているに違いない」

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