第七章 砂塵の死闘

第1話

「戻ったか、ネク、シェフィル」

「はい、無事に任務を終了しました。えっと、詳細な報告は……」

「ああ、あとでアルマに伝えてくれ。

 私がここに来たのは別件だからな」


行商の護衛任務を終え、ネクとシェフィルは都市キャラウェイに戻り、冒険者ギルドへ報告をしていた。

が、受付で話をしていた途中で、アルマからギルド長に代わったのだ。

首をかしげるネク。また周囲の冒険者もギルド長が出てきたことに興味を覚えたのか、耳を傾けていた。

ちなみに、都市クリントンに到着したあと、観光をしてみたかったのだが……それは叶わなかった。

どうもシェフィルがエルフであることが原因らしく……都市クリントンを管理しているエルフが、他都市のエルフが来ることを嫌がったらしい。

そのことを、ブリューヒャ伝手に聞いた時のシェフィルの怒りっぷりは半端なかった。

なんとか宥めながら帰ってきたため、多少はマシになったものの、今でも彼女は仏頂面のままだ。



「ネク、護衛任務成功……砂蚯蚓サンドワーム討伐の功績をもって、シルバーランクに昇格する」

「……え?」

「ブリューヒャ殿からすでに報告がきていてな。あわや全滅しかねない事態を解決したと。

 こちらとしても行商人とは懇意にしておきたい、といっただろう?

 君は見事に貢献して見せた、ならギルドとしてもそれに応えないといけないだろう」


笑うギルド長に、ネクは茫然としていた。

ついこの間まで新人も新人だったのだが……それが、ギルドでもベテラン層となるシルバーランクへの昇格を果たしたのだ。



「やったじゃないネク。これで仕事の幅も増えるし、いろいろとメリットもあるのよ」


思いがけない出来事に機嫌を直したのか、シェフィルも嬉しそうな様子だった。

実際にシルバーランクであれば、今回のような護衛任務ももっとスムーズに行えるし報酬額も上がる。

査定でも有利になるし、そのメリットは大きいものだ。



「あ、ありがとうございます」

「まだ実感がわかないかね?大丈夫だこれは現実だ。

 あとで端末の情報も更新しておくから、アルマから話を聞いておいてくれ」


そういって手を振り立ち去るギルド長。

はーっ、と大きく息を吐くネクは、未だニコニコと笑うシェフィルにひとまず笑顔を返した。




「あ~いいねぇ。

 実力がなくても人気者で、地位も機体もなんもかも恵んでもらえるヒモくん!俺もなりてぇわ~」


その言葉にネクが振りかえると、そこには1人の男が立っていた。

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