第4話

日も傾きかけてきて、行商人らもそろそろキャンプを張る準備をすると、足を止めて荷下ろしをしていた時だった。

ここから2~3マイルほど離れた場所で、砂漠の丘が急に盛り上がる様子が見える。



砂蚯蚓サンドワームだ!!」


行商人の長であるブリューヒャの声が周囲に響き渡る。

ネクとシェフィルは急いで機体に乗り込み、出撃した。



砂蚯蚓は最大で10mにもなる、砂漠に住む巨大な動物だ。

見た目はまさに巨大化したミミズそのものであるが、頭部にあたる部分は巨大な口腔になっており、砂ごと獲物を丸呑みしてしまう。

雑食性であり、砂漠に残るわずかな植物や、砂漠に住むモンスターや動物を食べる。

ロボットや車両のような機械類は食料とは見なしていないのか、冒険者が移動中に襲われることは滅多にない。

それ故に討伐されることも殆どないのだが……機械類を使わず、生身で移動する行商人からすれば最悪の仇敵の一つである。

砂蚯蚓は既にこちらを把握しているのか、砂を巻き上げながら行商に近づきつつあった。



ダダダダダダダッ!!


ネクが機体を戦闘機動で動かしながら、手にした機関短銃サブマシンガンを射撃する。

小気味良い発砲音とともに砂蚯蚓の体表が削れるが、しかし極わずかだ。

続けてシェフィルが選抜銃マークスマンライフル三点射撃バーストを行うものの、ネクの攻撃よりも効き目がある程度で、致命傷には遠そうに見えた。



『硬い!』

『銃撃は効きそうにないわね、炸薬弾でも持ってくるべきだったかしら』


銃撃を加えたことで怒ったのか、砂蚯蚓はネクたちのほうへと向きを変えた。

巨体が砂を巻き上げながら迫ってくる様子にネクとシェフィルは息を呑みながらも、回避軌道をとって突進をよける。

すれ違いざまに銃撃を加えるがやはり効果は薄く、口の中を狙って射撃するが、やはり弱点というわけではなさそうだ。



『それなら……シェフィル、僕が前に出る!援護を!』

『何を?!』


ネクはそう言い放つと、機体背面に備えた武装ラックから装備を取り出す。

瓦礫の切断に使う機械鋸チェーンソーだ。

これならば例え銃弾を弾く砂蚯蚓でも切り裂けるだろう。

格納されていた刃が飛び出し、エンジンを始動すると唸り声をあげ鋸刃が回転を始めた。

ネクは機械鋸を構えると、機体を前進させ砂蚯蚓へと突進する。



『正気なのぉぉぉ?!』


絶叫するシェフィルだったが、銃弾を徹甲弾に変更し、単発式に切り替えた選抜銃で砂蚯蚓の口腔内を撃ち抜く。

銃弾が貫通し、今までになかった痛みを覚えた砂蚯蚓の動きがかすかに鈍る。



『うおりゃあああああ!!!』


ネクはその隙に飛び込み、砂蚯蚓に機械鋸を叩き込む。

瓦礫を粉砕するような、しかし爆ぜるような水音が混じる奇妙な爆音をあげ、砂蚯蚓の体が横に真っ二つに両断された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る