第3話
行商が都市キャラウェイを発つ日となり、ネクとシェフィルは車両に乗り込んで彼らの列に並んだ。護衛が2人だけと少々心許ない形ではあるが、行商自身も自衛の武器は所有している。
またシェフィルはランクこそシルバーではあるが、腕は上位ランクにも匹敵するとギルド長からのお墨付きもあり、行商もそれで納得した形だ。
「他都市なんて初めて行くわ!というより、エルフで他都市にいったことのある人なんていないんじゃないかしら!」
「いや多分、冒険者でもめったにいないと思うよ」
護衛任務ともなれば長丁場になるため、運転席にいるシェフィルはいつものパイロットスーツではなく、普段着に近い装いだった。
長袖のシャツにスパッツのようなパンツルックといった様子で、仮にこのまま機体に乗り込んでも服をひっかけたりしないようにしている。
ネクは一度つなぎを勧めてみたが、「野暮ったくてイヤ」と断られてしまっていた。
「それにしても……話には聞いていたけど、行商人ってやっぱりドワーフばっかりなのね」
シェフィルの言葉にネクも頷く。
出立前の挨拶や打ち合わせで出てきたのは、全員背の低いがっしりとした成人……ドワーフだった。
彼らは頑丈な肉体に、それに見合わぬ器用な指先、そして生まれながらに毒物に対する耐性を保有した
行商ともなれば、過酷な砂漠の環境に耐えられるだけの体力があり、道具が故障したときに応急措置ができるだけの技術を持ち、そして何より有毒ガスに対する備えが必要となる。
なるほど、ドワーフでなければ行商人は務まらないだろう。
「それに……車両を使わないのね、行商人って」
「燃料費が嵩むらしいよ、それにあの動物も商品になるんだって」
ドワーフが商品を運搬するのに使っているのは、
旧世代において様々な用途に使われた、遺伝子操作により人為的に作られた家畜だ。非常に大柄で力も強いが、気性は穏やかで、なんでも食べる雑食性。多産で子供もすぐに大きくなる。物資や人間を運ぶのもよし、殖えたら屠殺して食肉に加工してもよしといった、家畜として理想的な要素を備えている。
唯一欠点といえるのは、脚が遅いことくらいか。そのため行商人たちは冒険者の車両と比べれば、ゆっくり、のんびりと前進している。
「車両の燃料代はもってもらえる、って契約だし、いいんじゃない?たまには、こういうのも」
「うん、そうだね」
シェフィルの言葉にネクはうなずいた。
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