第2話

「護衛を雇いたいんだ、次の都市に行くまでの」


冒険者ギルドの待合室にて、行商人のドワーフの男性……ブリューヒャはそう切り出した。

話を聞くのは、冒険者ギルド長と、話を持ってきたアルマとネク。

アルマは本来非番だったのだが、事情が事情だけに休暇を返上しての労働らしい。

彼女は土気色の顔をしていた。



「それならば、普通に依頼を出してもらえれば……」

「そう思ったんだが……正直に言えば依頼料が異常に高くてな。

 今まで他の都市でも依頼してきているが、ピンキリはあるがここまでは高くなかった」


ブリューヒャの言葉に、ああ、と3人は頷く。

依頼料の高騰の最大の理由は、先の『機母マザーウィル』討伐任務のせいだ。

ドローンの排除により今まで探索できなかった廃墟が解放されたと同時に、ドローンがため込んでいた資材が眠っているのだ。

安定した金は得られるが拘束時間が長い護衛の任務より、はるかに実入りが良い仕事が転がっている状態なのだ。

加えて、討伐任務の際には少なからず犠牲者が出た。

その中にはロッグやベリといったベテランの冒険者も含まれており、護衛任務を遂行できる人材の不足もあるだろう。



「護衛が大変なのはわかるが、さすがにこんな依頼料は出せん……何とかできないか」

「そうは言われてもな……」


腕を組むギルド長だが、しかし案が浮かぶわけでもない。

こういった人たちとは懇意にしたいという思いもあり、なんとかしてやりたいとは考えているが、とはいえ冒険者の報酬の話ともなれば話は別だ。

命がかかっている仕事を安値で受けろとはとても言える立場ではないし、信用の問題にもつながる。




「あの、護衛の仕事ってことは……別の都市に行くんですか?」




どうしたものかと、ギルド長が悩んでいるところで、ふいにネクが口を挟んだ。

ギルド長とブリューヒャの目がネクへと向かう。



「ああそうだ、クリントンという都市に行く予定なんだが」

「やります!!」


二の句を継ぐ前にネクが了承の言葉を上げる。

呆気にとられるギルド長とアルマ、ブリューヒャの前で、ネクは連絡用端末を操作して何事かメッセージを送った。



「シェフィルも『行く!!!!』と言ってます!僕たち2人でよければ行きます!」

「お、おう、そうか」

「そ、そうしてもらえると助かるが……2人か、いやしかし贅沢は言えないか」

「……え、ネクさん、もう彼女と私的なやり取りしてるの?え?」


三者三様の言葉はしかし、まだ知らない世界へ思いをはせるネクの耳には届いていなかった。

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