第3話
目的地に到着した2人は、車両を自動自衛モードに切り替えて停めると、ロボットに乗って外へと出る。
機体の足元には瓦礫が転がり、砕けたアスファルトの隙間からは背の低い草がわずかに生え、崩れたビルが並ぶ光景。
空はいつものとおりに鈍色。
それ以外はただ砂が舞い、砂に埋もれ、砂に沈んでいる。
今まで見てきた廃墟と似たような風景であるが、しかしすべて一緒な風景はどこにもない。
ネクは少し、気分が高揚していくのを感じた。
『初めての場所だし、いろいろと見て回りましょ』
『ええ、そうですね』
シェフィルの提案にネクは首肯し、機体を巡行モードにしてゆっくりと前進する。
その足取りは、
冒険者として重量機体を使用するにあたって、チェスが入念にカスタマイズを行った結果だ。装甲の一部を削除・簡略化することで、出来る限り防御性能を維持しつつ機動力を得ている。
背が高く拉げた建物の隣にある、橙色の建物を目にして2人して立ち止まる。
シェフィルが「レンガ造りみたいね」というと、ネクは「レンガって?」と尋ねる。
旧世代よりもさらに昔の人類は、土や石をブロック状にして切り分け、それをくみ上げて建物を作っていたのだとシェフィルに説明されたネクは、感心して建物の残骸を眺める。
前の機体の残骸から引きあげたチェスのお手製の高性能カメラを使い写真を撮ると、シェフィルは後で画像データが欲しいとせがまれる。
そうやって瓦礫の間を進んでいき……潰れた建物の間に、旧世代の車両の残骸を見つけると、喜んで場所をマーキングしあとで回収することを決める。
自身たちの頭上を通る、半ば崩れた道のような建物を見て「センロだよね、あれの上でデンシャっていうのものが走っていたっていう」とネクが言うと、「あれはきっと、高速道路よ、車が走る専用の」とシェフィルが答える。
そうやって2人は、他の冒険者と比べるとかなりゆっくりとしたペースで廃墟の通りを移動していたが……ネクの機体のカメラに備えたセンサーが異常を検知した。
『シェフィルさん、モンスターです。3時方向、684フィート』
『わかったわ』
二人は素早く近くの瓦礫に身を潜める。
ネクは機体のカメラを再度そちらに向け、解像度を上げてモンスターを再度確認する。
ネクのカメラが捉えた情報はシェフィルの機体にもリンクされており、搭載されたライブラリーを参照して、モンスターの特定を行った。
『……『
ネクの言葉にシェフィルも頷く。
カメラがとらえたのは、大柄のモンスター……旧世代では『カマキリ』と呼ばれていた昆虫を素体とした、
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