第五章 砂塵の冒険
第1話
冒険者ギルドはその日、ざわめきに包まれていた。
人が集まる場所であり、商談や廃墟の様子、身の上話など、話題には事欠かない冒険者たちだ。それ故喧騒に包まれているのが常だが、しかし今日の雰囲気は普段とは異なっていた。
「おい聞いたか?エルフの
「知ってるよ、さっきからその話題で持ちきりだ」
「相手は誰なんだ?お前知ってるか?」
「新人らしいぞ、まだ成りたてのガキだって聞いたが」
「物好きか、単になんも知らない阿呆か……」
シェフィルは、白い機体と
冒険者からすれば、女性の冒険者というだけでも相当珍しい。
冒険者とは命を懸ける危険な仕事であり、しかも必ず儲けが出るとも限らない。
リターンも大きいがリスクも相応にあるため女性受けは良くないし、金が欲しいだけなら、もっと楽に稼げる手段がある。
それに加えエルフだ。都市の支配者階級である彼らを目にする機会など冒険者には本来ない。
故にシェフィルのことは半ばタブーとなっており、忌避されていた。
ガシャン――――
冒険者ギルドのロボット格納庫では、今まさにシェフィルの白い機体が起動し、ハンガーから立ち上がっていた。
そして彼女の機体に従うように、もう1機の機体が立ち上がる。
かなり大柄な機体だ。細身であるシェフィルの
カーキ色に染められたその機体は、少々ぎこちない動きながらも、シェフィルの機体の後ろを歩いていく。
『ちゃんと動かせているじゃない、練習した甲斐があったわね、ネク』
『そ、そりゃあもちろん……』
そう答えるネク……彼が今乗っている機体は
分厚い装甲に包まれ、それを支える強靭な馬力性能を持つ脚部。圧倒的な
もし知る人が見れば、旧世代の大戦で滅んだとされる国家に居た歴史上の人物、『ベンケイ』のようだと表現しただろう。
「
「まあ冒険者になり立てで……機体のスペックだけ見れば、そうなるかもな」
「よくそんな金あったな、高いんだよな」
「エルフに出してもらったんだろ?いいねえ」
それを見た他の冒険者たちは本人たちが聞いているのも構わず囃し立てる。
が、彼らの言うことも事実だ。
しかし冒険者には最も不人気な機体であり……その理由の最もたるものが、燃費の悪さ。
その能力を発揮するために多くの燃料を消費するため、経済面で効率が良くないのだ。また動きが鈍重なことも、廃墟探索のためにあちこちを移動ため、動きの軽快さを重要視する冒険者には不評である。
拠点防衛に特化している、都市の衛兵のような守備部隊であれば適任だが。
『いきましょ』
『……はい』
シェフィルはいつもの通りだと慣れた様子で、ネクは少々居心地悪そうに、車両へと乗り込んだ。
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