第5話

「そういえば……シェフィルさんは、どうして冒険者に?」


話題を変えようとネクは口を開いた。

質問の内容は、もとより彼女に聞きたかったものだ。

冒険者というのは命の危険のある仕事だ。

エルフであるシェフィルには、当然為政者としての能力が備わっている。

大変な仕事であるのは間違いないだろうが、しかし死んでしまうようなことはないだろう。

冒険者は高給とはいえ、いつも上手くいくとも限らない。

彼女が、冒険者になった理由と言うのがネクには分からなかった。



「そうね、色々とあるけれど……」


シェフィルは口に指を当てて思案し、そして、ふっと笑った。



「……まだ見ない場所とか、風景とか、とても気になるじゃない。

 旧世代の人たちが見てきたものを、私も見てみたいの」


シェフィルの言葉にネクが絶句していると、シェフィルのロボットの定期整備員として申請する書類を書いていたチェスが、「へえ」と呟いてこちらを見る。



「へえ!ネクと一緒なのね。」

「……そうなの?」

「あ、え、ええ」

「お金のためじゃなくて、旧世代の廃墟を見てみたくて冒険者になったの?」

「……はい、そうです」

「そのために私がカメラを新調したしね~」


シェフィルに尋ねられネクは頷く。

まさか同じような目的を考えているとは思わなかったためか、恥ずかしそうに俯いた。



「……そう、あなたも……

 ……

 うん、ちょうどいいわ。

 ……ねえ、ネク。

 あなた、私と組んでくれない?」

「……へ?」


頷くシェフィルの言葉にネクは呆気にとられる。



「その……なんで、です?」

「……前々から、一人ソロでの活動には限界があるとは思っていたわ。

 スコープの件を抜きにしても、前回の任務で特にそれを思い知った。

 もとよりパーティを組みたくなかったわけじゃあないけれど……。

 私はエルフじゃない?だから組んでくれる人がいないのよ。

 でもネクやチェスなら……エルフだから嫌ってことはないでしょう?」

「ええ、それは……

 ……ただでも、僕の機体、あのとおり自爆で壊してしまって……

 ある程度補償はしてくれるみたいなんですが、しばらくまたレンタル機体なので、足を引っ張ってしまう気が……」


前にコンピュータを回収して得た貯金も素寒貧です、と言うネクに、シェフィルは「そんなこと」と頷いた。



「いいわよ、じゃあ私があなたの機体を買ってあげるから」

「……は?」

「どういう機体が良いの?

 ああ、せっかくなら冒険者ギルドの機体を買うんじゃなくてメーカー品にしましょう。チェス、カタログはある?」

「あるよー!

 あ、どうせならメーカー品カスタムしない?

 ブースターの容量や機体の軽量化まで、何でもできるわよ!」

「本当に?今何でもできるって言ったわね?」

「お金次第だけどね!」


呆然とする当事者ネクを置いたまま、シェフィルとチェスはきゃいきゃいとカタログを開き意見を言い始めた。 

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