第10話
『あんた!どうしてそんなに無茶をしたのよ?! 死にたいの?!』
『つ、つい咄嗟に……すみません……』
『咄嗟に、じゃないわよ!咄嗟にしないわよそんなこと!』
ボロボロの残骸になったネクの機体は、拠点へ向かうシェフィルの機体に引きずられていた。爆発によりネクの機体の両手足は吹き飛び、半分焼け焦げたコクピットと通信機器とカメラだけが残っている。
……『エンジンに銃弾が抜けると引火してしまう』『コクピットは非常に頑丈で機体が損壊しても安全である』……
そういった、冒険者となる際に受ける講習や、ロッグやベリのような先輩からの助言を聞いていたネクは、機体を『自爆』させることを思いついたのだ。
一か八かの賭けであり、ともすればネク自身が死にかねない行動であったが……何もしなければ死んでいたあの状況では、最善であったとネクは考えていた。
だがそういう事情や算段があったとはいえ、ネクが生き残ったのは飽く迄も結果論だ。しかも辛うじてであり、全身あちこちを骨折し、火傷や裂傷だらけの満身創痍の状態である。治療しなければ死んでしまうほどの重傷であるのは間違いないため、シェフィルの説教に反論することはできず、ただ平謝りを続けるしかなかった。
『戻ったか、ネク。
話は聞いた、第三次機体がそちらにも出たのだな。
相打ちとはいえ討伐したとは見事なものだ!』
拠点へ戻ると、指揮官役の冒険者がネクを称賛する。
ちらりとシェフィルの方を伺ったが、しかし彼女には特に声をかける様子も触れる様子もなかった。
シェフィルも気にしていないのか、何も言わない。
『今回の討伐任務も完了だ。
先ほど、攻撃部隊が
……第三次機体が出るほどに時間がかかったのは、ギルドも計算外だっただろうな。他の冒険者の部隊も襲われて、何人か死んでしまった』
任務完了を喜ぶ冒険者らだったがしかし、そういった事情のため手放しには喜べていない様子だった。泣き声を上げている者もいたが、ともあれ、任務完了は任務完了だ。街に戻れば多額の報酬が受け取れる、表向きは沈痛な面持ちながらも、頭の中ではその報酬で何をするかの算用している者が多かった。
ネクは、まずは自爆で壊した機体の修理費にしなければ……と考えたところで、ふと拠点へ
攻撃部隊が続々と戻ってきているが……。
『あの、第十一部隊はどうしたんですか?』
ネクが指揮官役の冒険者に尋ねる。
彼は端末を確認して、少し間をあけた。
『第十一部隊というと……ネクが補給に向かった、ロッグ、ベリ、ルガの3人の部隊だな。
彼らは……残念だが全滅した。
第三次機体の奇襲を受けたらしい、遺体も回収済みだ』
ごう、と強い風が吹いた。
それは廃墟につもった砂を巻き上げ、一瞬視界を奪った。
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