第9話

グシャ―――――ッ



「がっ?!」


第三次機体アドバンスドの振り抜いた斧槍ハルバードの勢いのまま、ネクの機体は廃墟の壁に叩きつけられる。

コックピット内のネクも身体を強かに打ち付け、血反吐を吐きだした。頭を切ったのか、血が目に滲む。

操縦桿から手を離さなかったのは、奇跡ともいえる状況だった。



「反応、速度が……早すぎる………!」


霞む視界の中で機体の状況を確認するネクであったが、モニターからは狂ったように警告メッセージが吐き出され、計器類の多くは故障した。

そして生き残った計器類が示している数字は、もうネクの機体はまともに動かせないという事実を示している。



「クソッ……! あっ!」


舌打ちするネクは、奇跡的に生きていた機体のカメラの映像を見る。

第三次機体は斧槍を構えなおし、こちらへとそれを振りかぶっていた。


万事休す。


ネクはせめて、目を閉じず、映像越しに第三次機体を睨みつける。

そして、斧槍が振り下ろされる。




ドォン━━━━━━━━ッ!!


次の瞬間、第三次機体が大きくよろめいた。

轟くような銃声に向け、ネクはそちらへと機体のカメラを向ける。

白い機体……シェフィルの機体の選抜銃マークスマンライフルの狙撃だ。

左腕を失った彼女の機体は、機体の足を高く上げ、そこに銃身を置いて砲身を安定させ射撃を行ったのだ。

高威力のライフル弾は第三次機体の装甲を食い破り、その胴体に大きな穴をあける。



ゴガギギギ・・・・・


『くっ! しぶとい、まだ動けるっ……!』


だが致命傷とはならず、第三次機体はぎこちない動きながらも、斧槍を手放し、背負っていた自動小銃バトルライフルを構える。

舌打ちするシェフィルの機体へと、自動小銃の照準を合わせ……




ガシッ・・・!


倒れ込むようにして、ネクの機体が第三次機体の腕をつかむ。

しかし、もはや動くのもやっとな状態であるネクの機体では、拘束するだけの馬力を出すことは不可能だ。

少々時間を稼いだけ、第三次機体は機体出力を上げネクの機体を振り払おうとして……



『お前の相手は……、僕だって……言っただろう、ブリキ……野郎……!』


ネクは機体のもう片手で、対機拳銃マグナムを構える。



『! あなた、待ちなさい!』

『吹き飛べ――――――――!』


意図に気が付いたシェフィルの叫び声が聞こえるのと同時に、ネクは対機拳銃を発砲した。


それはネクの機体のエンジンを撃ち抜き、燃料に引火して……腹に響くような大きな音と共に、ネクの機体は第三次機体ごと爆発した。

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