第7話

ドローンにはいくつかの段階がある。


ドローンの生産を始めた『機母マザーウィル』は、まず『第一次機体ベーシック』を生産する。構造が簡略化され必要な物資も少なく量産に向いたこの機体を使い、周囲の探索や物資の調達、前線基地フロントラインの建設を行うのだ。


物資が集まり、ある程度の生産設備が整うと『第二次機体スタンダード』の生産を始める。第一次機体と比較すると構造は複雑で、人工知能AIの判断能力も運動性能も格段に向上する。

実用的な武器も装備したこれらの機体はドローンの守衛だ。

『機母』や前線基地の生産設備を守る防衛戦力として、自身らに近づく存在を排除する。



そして防衛戦力が整えば、いよいよ攻勢に移る。


『第二次機体』の攻撃能力を格段に引き上げた機体。


侵略のため、人間を一人でも多く殺すために造られた特注機体。



それが『第三次機体アドバンスド』。






グウォン――――――ッ



止まっていたのは、瞬きする間ほどの間の時間だった。

ネクの目の前で、第三次機体は手にした斧槍ハルバードを振り、大上段に構えた。

それは瓦礫に突っ伏し、動けないでいるシェフィルの機体へ向けられている。


逃げなければならない、ネクはそう聞かされていた。

第三次機体を討伐するのであれば、万全の状態のシルバーランクの冒険者が複数人、あるいはゴールドランク以上の冒険者が必須だ。


ネクが敵う相手ではない。



シルバーランクとはいえ、シェフィルのような一人で廃墟探索ができるほどの実力の持ち主でさえあの状況なのだ。



ネクが敵う可能性など万に一つもない。



この場で逃げ出したとしても、ネクを責める人間は一人も居ないだろう。

むしろ第三次機体を発見し、報告することを感謝されるはずだ。

だからネクが、この場でするべきことは、シェフィルに詫びて全速力でこの場を離脱し、拠点へ急ぐことだ。

ネクは歯を食いしばり、操縦桿を握りしめて……




ガァァン!!



手にした対機拳銃マグナムを第三次機体に向け発砲した。

銃弾はガツン!と音を立てて第三次機体の装甲を削る。



『お前の相手は僕だ!このブリキ野郎!』


キュイ



第三次機体のカメラがネクの方へ向けられる。

それに対し、ネクは戦闘斧バトル・アックスを抜き放ち構えた。

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