第8話

ネクたちを乗せた車両が街に到着した。

入り口の関所で狭域無線通信による身分証明を終えると、そのまま冒険者ギルドの格納庫へと移動する。

しばらくして自動でドアが開き、ネクたちの機体が外に出た。

それぞれの機体をドッグにまで移動させると、すぐに冒険者ギルドの職員が近づき、コックピットの封を解除していく。

プシュッと密閉された空気が噴き出し、コックピットのドアが開いた。


「あっちぃ~」

「ふう……ああ、パイルバンカーを使用した。念のため左腕の歪みを確認しておいてほしい」


機体からベリたちが出てくる。

ベリは赤く染めたドレッドヘアの男で、ロッグは禿頭、ルガはぼさぼさ頭の黒髪の男だ。

ネクが一番若く、短く切り込んだ黒の少年。

ジャケットやタンクトップなどラフな格好をしているが、全員汗をかいて時折手で身体をあおぐ。

機体に空調はついているのだが、燃料を節約するため使わないことが多く、熱がこもるのだ。

4人はそれぞれの機体から降りていく。

探索結果などの報告は、今回のパーティのリーダーであるロッグの仕事だ。

ロッグは、やってきた担当のギルド職員に説明し、時折職員から出される質問に回答する。

それを受けた職員は情報端末を使って記録し、様々な内容にチェックを入れていく。

報酬の査定に関わる部分なので、お互いに真剣だ。


「よし、俺たちはシャワーしたら、先に飲み屋行ってるわ。ネクも来るよな?」

「七時通りの『ヘミングウェイカクテル』だ、場所は端末に送っておく」

「あ、はい!行きます、また後で!今日はありがとうございます!」


特段冒険者ギルドで待機し続ける必要はないため、ベリとルガは先に今日の打ち上げの場所へと向かうようだ。

ギルド職員から水を受け取っていたネクも、誘いに同意して、頭を下げる。

ベリが親指を上に突き立て、ルガが頷いて退出していくのを見送っていると、職員がくすっと笑う。

左の目元に黒子のある20代の女性だった。


「ネクさんはベテランの冒険者さんとも、すっかり仲良しですね」

「いえ、そんな。僕なんて、まだまだですよ」

「謙遜ですよ。大抵の新人冒険者さんは、なんか拗らせてるというか、どうも冒険者に対して変なイメージを持っているというか」

「変なイメージ?」

「ええ、ほら、ムービーとかコミックとかで先入観を持ってきちゃう人が多いのよ。活躍劇を期待して、ギャップに怒っちゃう人とか」


目を閉じ、ふう、と溜息をつく職員の女性にネクは苦笑する。


「ギルドの人も大変なんですね」

「そうよ……って、ごめんなさいね、冒険者さんに言うことじゃなかったわね」


彼女は口を手で押さえて、誤魔化すように微笑み、ネクにお辞儀をした。


「では、実地演習を終了を確認したので、ネクさんを正式に冒険者として認定します。

 冒険者ギルドの認証IDは端末に送付しておくので、確認しておいてください。

 私が、これからネクさんの担当をするアルマです」

「わかりました、こちらこそお願いします」

「はい。お願いしますね。じゃあ早速だけど簡単に規則を……」


そうアルマが話そうとしたとき、新しい機体が格納庫へと帰ってきた。

白い塗装を施された軽量級の機体、背に剣のように長い銃身のライフルを背負っている。

廃墟で出会った、シェフィルの機体だ。

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