第8話 初めて


「やっぱりカレーは安定だよね、」


「ね〜、そういう目的で入ったけど結構充実してるね〜」


「え、そういう目的で入ったの?」


「そうだよ?」


当然だよね、とでも言いそうな顔で美鈴は俺を見てくる


「まぁ、でも、もうそういう気分じゃないし、なんか色々できるみたいだから遊ぼ」


「良かった、」


取って食われることはないと安堵する


「へ〜、そんなに私とするの嫌だったんだ、」


俺が美鈴のことを嫌っているわけがないのに、美鈴もそれを知っているはずなのに聞いてくる、

いや、知っているからこそのあの表情なのだろう


「べ、別に、嫌というわけでは、」


やんわりと断りたいのだがそこまで言葉を知っているわけではないので良い表現が浮かばない


「ふーん、じゃあしたかったの?」


案の定そういうふうに取られてしまった


「別に、したかったわけでもないと言いますか、」


なんと答えたら良いのか返事に困る


「どうだった?」


美鈴が急に何かを聞いてくる


「どうだったって何が?」


「ん?、面倒くさい女のマネ、似てる?」


いつからものまね大会が始まっていたのだろうか


「いいんじゃない?よくわかんないけど」


思ったことをそのまま口に出してしまう


「まぁ、私も相当面倒くさいかもよ?」


「そうなんだ、」


適当に相槌を打ち食べることに集中する


「辛っ」


カレーが思いの外辛く声に出てしまう


「水飲む?」


美鈴が心配そうに聞いてくる


「もらう、ありがと」


俺がそう言うと美鈴はなぜか自分で水を飲み始めた


「んっ、」


水を口移しで渡された


「ゴホッ、ゴホッ、」


変な方法で飲まされたので咳き込んでしまう


「ちょっと、何!」


「こうやって飲んだほうがいいかな〜って」


あまりにやり慣れたような雰囲気だったのであまり聞いちゃいけなそうなことを聞いてしまう


「他の人にもそういうことやってるの?」


少し責めるような口調になってしまっただろうか、


「ううん、湊が初めて、何ならこないだの胸を揉まれたのも、あっ、でもキスは初じゃないかな?」


意地悪そうに最後の言葉を付け足す

その発言で胸が少しもやっとしてしまった


「そ、そうなんだ、」


「えー、ヤキモチ?」


「そういうのじゃないから、」


「誰か気になる?」


こういうのは誰か聞いたら自分が苦しくなってしまう、でも気になってしまい聞かざるを得なかった


「誰?俺の知ってる人?」


「うん、絶対湊の知ってる人、」


「そうなんだ、」


自分の知ってる人だとわかってさらに落ち込んでしまう


「まぁまぁ気を取り直して何かやろ?」 


「そうしようか、」


俺はそう答えると残っているカレーを残さず食べた


あれ?なんで俺美鈴のことで胸がもやっとしたのだろうか、

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