第499話 リスナー参加型配信、後半戦!伝説

 普通のスタジオなら、障害物競走なんかできないでしょう。

 だけどイカルガのスタジオは一味違う。


 単純にデカいのだ!

 観客入れてコンサートができるくらいの大きさがある。

 なんでこんなサイズにしたの。


『わしが異空間と繋げて拡張してあるから、ビルの外観よりも遥かに大きな容積があるのだ』


 ウェスパース氏の仕業だった!!

 今回はそれが十分に活かされたイベントなのだった。


 お陰でカンナちゃんと二人三脚!


カンナ『息を合わせますわよはづきさん!』


「任せてー! いち、に! いち、に!」


 二人でハードルを抜け、ツルツル滑る床を超え、網の中を通過する……。


※『この二人、チームワークが凄いな!』『付き合い長いからねえ……』『こんなところで尊いものを見れるとは……』『ありがたや~』


 私のコメント欄が浄化されていってる~!

 ついさっきまでの、怨念あふれる感じとは大違いなのだ!


 後ろでは、ファティマさんとリスナーさんがツルツル床で転んで、なんかセンシティブなことになっている。

 ファティマさんはかなりセンシティブと相性がいい人だからなあ……。

 おお、コメントが盛り上がってる盛り上がってる。

 スクショタイムだ。


 以前は簡単に収益化が停止していたアワチューブだけど、最近はこの辺りに理解を示すようになっている。

 というのも、運営が変わったとかなんとか……?

 水虎さんの財閥が関わったんじゃないかな。


 さてさて、私達は網の中をバタバタと抜けると……。

 いや、狭い空間でカンナちゃんと二人なので、密着できて大変嬉しかったのですが。

 レースなのでここから出ないと行けなくて、断腸の思いで網を抜けたわけだ。


 いよいよゴールが見えてきた!

 トリットくんは相方になるリスナーさんが一歩ごとにどんどん変わってて、全然進んでないし。

 ファティマさんは網の中でまたセンシティブな感じになってて、コメント欄が大盛り上がりしてるし。


 勝ったな……!

 いや、配信者として美味しいかどうかと言われるとアレなんですが。


 ゴールしてカンナちゃんと合法的にハグする……!


 と思ったら……。


カンナ『あっ、ごめんなさい! 仕事の時間来ちゃいましたわ! 私はこれで……』


「そ、そんな~」


※『はづきっち、なんという情けない声をw』『あー、取り残された』『またリスナー抽選が始まるぞ!』『正妻カンナちゃんの後に誰が入れるんだよw!』


さといも『わたしです』


※『お前だったのかwwww』『すごい確率を引き当てて草』『執念の勝利』『これは私達も応援せざるをえない』


「あっあっ、さといもさんよろしくお願いします」


さといも『いーえいーえ! 私、昼間はこのイベントのためにスケジュール気合で空けたから! これ終わったら本番前のリハだからね! 今は楽しんで行こうねはづきちゃん!!』


「あっはい!」


※『グイグイ来る!』『そっか、今夜はソシャゲの公開生ラジオか!』『野中さとな、多忙なはずだからなあ……』


 多忙だという野中さん、さといもさんのアバターを纏い、私と二人三脚なのだが……。


さといも『おっと、体勢が……!』


「なんのーっ!!」


さといも『あーっ、引き上げられてはづきちゃんに抱きとめられる……! なんという幸福……』


「さといもさん? 真面目にやりましょう」


さといも『アッハイ』


 妙にペタペタ触られながら……私達は一着でゴールインしたのだった。


さといも『こ、これで終わり!? せめてあと少し……ウグワーッ!』


 消えていってしまった。


※『断末魔で草』『なんて声だしてるのよw』『期待通りの活躍をしてくれたな……』『あっ、遅れてる二人に巻きが入ったぞ』


 巻き。

 文字通り、レースのコースがぐるぐると巻き取られ、遅々として進んでなかった二人とリスナーさんたちがどんどんこっちに転がってきていた。


 そして障害物レース終了!


「僕は多分百人くらいのリスナーさんをとっかえひっかえしたような」


「私は十人くらいでしょうか。全然進みませんでした」


 だけど二人とも大変受けてたからよし。

 この後、イノシカチョウがレースをして、こっちは健全に一進一退の攻防なので見ごたえが……。


 あっ、はぎゅうちゃんがリスナーさんを引きずりながら強引にゴール!

 リスナーさんはボロ雑巾みたいになりながら、満足気に消えていった。


 激しい愛の形だ。


 その後の出し物は、イカルガ対抗尻相撲とか。

 あっ、これは私が圧勝しました!!


※『はづきっちの尻つえー』『決勝ではぎゅたんをパワーでふっ飛ばしたのは見どころだったな』『はぎゅたんより尻大きいもんな』


 そ、そんなことはなーい!!


 さらにさらに、お料理レースではVRを装着するとお料理の香りと味をお届けできるというですね。

 新システムで全てのリスナーさんにハッピーをお届けする配信となりました。


 大好評のうちに、前半の部は終了。

 夜からの後半の部に突入していくのでした。


「お疲れ様でしたー! 夜の部まで休憩でーす!!」


 プロデューサーさんが声を掛けて、みんなが「はーい」と返事をする。

 いやー、疲れた!


 みんな、シャワーを浴びたり仕出しのお弁当を食べたり。

 真面目なぼたんちゃんは、夜の部のプログラムの確認をしている。


 夜も司会するもんね。


「私はシャワー浴びたら出るわね。別のイベントもあるから。それじゃあみんな、頑張って」


 ビクトリアは声優さんとしてのリアルイベントの仕事があるので、ここで出発。

 みんな忙しいのだ……!


 さて、私は夜の部まで何をしようかな。

 雑談配信でもするか……!


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