第497話 イカルガクリスマスイベント伝説

 クリスマス!

 一瞬で冬になってしまった……。

 恐ろしい恐ろしい。


 学年を重ねるごとに、時間経過が速くなっていく気がするなあ……。


 イカルガはみんなでイベントをやる予定で、これは配信します。

 リアルイベントは会場を押さえてないからなあ。


「うちのトップ配信者のコンサートで全力を使ったからな。あまり連続でもリスナーが息切れするだろう」


 とは兄のお話。

 この人も一日だけ八咫烏さんとコンビを再結成して、大魔将をぶっ飛ばしたそうだ。

 勇者パーティとこの二人の活躍が、ちょこちょこ切り抜きで流れてくる。


 めっちゃ動ける社長じゃん……!!

 でも復活する気はないらしい。


「なので、リアルイベントは三月だ。お前の引退の日だな」


「ひえーっ、私の引退をリアルイベントで締めるおつもりで」


「それはそうだろう。世界最高の配信者の引退だぞ? 世界が納得できる形にするのが筋というものだ。こうしてお前は伝説となり、国民栄誉賞ももらえる……」


 なんか兄が変なことを言っている。

 と思ったら受付さんこと義理のお姉さんがスススっと近づいてきて、


「えっ? もうはづきちゃんの国民栄誉賞授与は確定してるって言ったじゃない。言ってなかったっけ? 迷宮省から連絡があって」


「あひー」


「そうだったか……? いや、だが当然だな。我が妹の才覚を持ってすれば時間の問題だった」


「シスコンだなあ」


 衝撃に震える私と、変なのろけ方をする兄と、それをニコニコしながら眺めるお義姉さんなのである。


 さてさて、イカルガビルのスタジオに行くと……。

 設備が拡充されてますね?


「これね、はづきっちがドバドバお金を稼いでくれるから凄いことになってる。このスタジオだけで二十億くらい上乗せで注ぎ込まれてパワーアップしたよ」


 たこやきがやってきて説明してくれた。

 この人ももう、マネージャークラスの役職らしい。

 マネージャーが私の配信に当たり前みたいな顔してコメントして、スパチャを投げてくるの……?


 まあいいか……。

 知らない間に出世してるとか珍しくもなんともないでしょう。

 知らぬ間に国民栄誉賞の対象になってる女子高生がいるくらいですし……。


 スタジオには、全員が揃っていた。

 この会社、楽屋という概念が無いので、出演者がみんな普通にスタジオで食べたり飲んだり休んだりしているんだよね。

 カメラの外は無法地帯だぞ!


「あっ、先輩来た!」


 もみじちゃんが気づいて、みんながワーッと沸いた。


「お待たせえ」


 手を振って合流。

 今日の予定について確認する。


 なになに?

 お昼に二時間生放送して、色々なゲームコーナーとか視聴者参加型のイベントをやって。


 夜に後半戦でコンサートを二時間と。

 盛りだくさんじゃないですか。


 このイベント、司会はお喋りが上手いぼたんちゃんとカモちゃんが担当なんだよね。


「師匠! わらわの定位置はここなのじゃ!」


「スファトリーさんいらっしゃーい」


 私の懐に飛び込んでくるマスコット系配信者。

 それをむぎゅっと抱っこして、配信スタートなのだ。


 クリスマスは他の色々な配信者さんたちも自前のイベントをやっているから、基本的にゲストをお迎えしないのだ。

 うちの箱だけで行っていきます。


 おっと、配信が始まりました。

 コメント欄が映っているので、みんな待機画面でわいわいと喋っているのが分かる。


 ここでイカルガ商品をプロモーションするわけです。

 みんな、買ってね!


「しかしすっかり師匠はダンジョン行かなくなったのじゃ!」


「触ったら消滅するからねー。フラジャイルですよフラジャイル」


「圧倒的強者の悩みなのじゃなあ」


 私とスファトリーさんがぺちゃくちゃお喋りしてたら、なんかコメント欄の流れが早い。


「あっ! 先輩! マイクのスイッチ入ってます入ってます!」


「な、なんだってー!!」


「なんじゃとー!!」


 驚愕する私達。

 向こうで、プロデューサーさんがぐっとサムズ・アップしていた。

 ハプニングを狙ったなー!


※『会話聞こえてくるw』『マイク~w!!』『配信の外でもはづきっちははづきっちなんだなあw』『スファちゃんもかわいいw』


 既に同接数は二桁万人。

 いやあ、期待されてますねー。


 ここで待機画面がパッと変わった。

 ずらりと並んだ、イカルガエンターテイメントの配信者たち。


 私とスファトリーさん、ビクトリア、もみじちゃん、はぎゅうちゃん、ぼたんちゃん、カナンさん、ファティマさん、バングラッド氏にトリットくん、カモちゃん。

 総勢十一人!


 円卓にはあと一人足りませんが、社長は基本的に黒幕みたいなポジが大好きなので……!


 ぼたんちゃんが私達を見回し、小声で「せーの」とタイミングを会わせた。


「「「「「「「「『「「イカルガ・クリスマスパーティー!!」」」」」」」」』」」


 うわーっと盛り上がる。

 スタジオに設置された機械が、立体映像でクラッカーとかをパカパカぶっ放す!

 現実でこういうことできるの?

 すごい装置だなあ。


 めちゃくちゃにコメント欄が盛り上がっております。

 ネチョネチョ動画でも、コメントが流星群みたいに流れていますねえ。


 昼間は読者参加型リアルイベント!

 それじゃあやっていきましょう……!


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