第496話 引退関係のお話伝説

 光陰矢の如し!!

 あっという間に時間が過ぎていき、秋は終わってもう冬。

 道行く人々もコートを羽織ってますね。


 私もモコモココートで通学しております。

 ダンジョン配信回数は明らかに減ったかな。

 発生件数が半減したし、危険度も魔王の時より下がったから他の配信者の人に任せている。


 私はもっと別の件で忙しかった。

 メディアに呼ばれてインタビューしたり、大きな箱(配信者会社、グループ)のイベントにゲスト参加したり。

 後は、来年以降の私プラモとか私フィギュアとか私アクスタとかの撮影が……!


 いそがしー。

 そうそう。

 今後の予定を決めたのだった。


「留学しようと思うんですよねー。イギリス」


「いいんじゃない?」


「気を付けて行ってくるんだぞ……。心配だなあ……」


 両親の反応が対照的!

 母は楽観的なのだ。


「あなた、魔王をやっつけたんでしょ? もうちょっとやそっとのことじゃ何ともならないわよ。大丈夫大丈夫」


 対して父は悲観的。


「だがな、まだ十代の子どもだぞ。高校を卒業したとは言え、親の庇護も必要な年頃だ。俺は心配だよ……。悪い男にたぶらかされたり、悪い遊びを覚えたりしたらどうしよう」


「大丈夫じゃない? だって私達の子どもだし」


 母の信頼が強い!

 この言葉に、父も「おっ、そうだな」と言わざるを得なくなったのだった。


「何より、向こうなら議員のルシファーさんっていう人が保護者を務めてくださるそうだし」


「前にイギリスに行ったときにお世話してくれた人か。なら安心か……」


 あっちは帰国したシェリーとホワイトナイトさん、ブラックナイトさんもいるしねー。

 それに世界は前よりもずっと狭くなった。


 飛行機がかなり安全になったので、各国を行き来する人が増えてきたのだ。

 時代は変わってきている~。


 もちろん、空中ダンジョンとか、乗り物のダンジョン化が全く発生しなくなったというわけではない。

 注意はしなくてはなのだ。


「向こうの学校は9月からだけど、日本の慣例に従って4月には研究室覗けるようにしてくれるって! だから卒業したらすぐに行こうかなって」


 卒業旅行の直後が、イギリス行きの旅路になりそうな気はする!


 最後に母が聞いてきた。


「配信はどうするの?」


 そこは前々から決めてたことだ。

 最初の年に、父に伝えてるし。


「配信も卒業する。高校三年間だけのつもりだったし」


 こうして私は、自分の配信者生活のゴールを決めた。


 時間がどんどん過ぎる。

 あっという間に来た。

 クリスマス!!


 クリスマスでいついつ引退しまーすという発言をするのもアレなので、私はその前々日くらいの雑談配信でサラッとぶち上げた。


「今年度の三月で引退するんですけどー」


※『エッッッッッ!?』『そ、そんなー!』『いやーん!!』『生きる希望がーっ!!』


「高校を卒業しますし、新しい進路に進むので……。具体的には留学しますが」


※『あっ、人生を先に進めていく……!』『ぐうおおおお我々はそれを止めることは出来ない』『はづきっちの人生だからな……』『が、頑張ってクレメンス……』さといも『(T_T)』


 皆さん悲しんでいる!!

 すみませんねえ……。

 でも私、一旦決めた事は何があっても決行するので。


 私の引退宣言は世の中に衝撃を持って受け止められた。

 まあ、取引先各企業には最初から伝えてあったので、そこまで問題にならなかったけど。


 インペリアルレコードさんは、一番上の人から「引退を撤回させろ! 我が社の稼ぎ頭だぞ!」みたいな話が来たらしいけど、私担当の部長さんがのらりくらりと躱したらしい。

 最後は、私をその部長さんが説得する寸劇みたいな茶番を収録し、国家間の問題になりますからねーという結論を出して偉い人に送った。

 無事にご納得いただいた様子。


 決して、式神を使って穏便に済ませたりしてない。

 株主の人たちもご納得いただけたようで良かった良かった……。


「先輩の引退関係の話、一瞬炎上したかと思ったらすぐ鎮火しますよね……? 裏で何かしてます?」


 もみじちゃんが人聞きの悪いことを!


「インペリアルレコードくらいしかしてませーん! 後はほら、水虎さんの財閥とか迷宮省とかが動いて火消しを続けてるだけで……」


「あっ」


 なんか察されてしまった!

 まあ、世界の有力者が忖度してくれているのは感じるよね。

 優しい世界だなあ。


「リーダーの場合、その有力者たちのさらに上位存在だからでしょ? 配信者やめてもその変に強力な力は無くならない気がする……」


「はづきちゃん、配信してなくても式神使えるもんね」


「はっ。細かい作業を手伝ってもらってます」


「あたし思ったんだけどさ。師匠、ベルっちに配信してもらったら」


 おっ、はぎゅうちゃんからナイスアイディア!!


『なるほどー。私は今のところ人類の敵になる予定はないから』


「うんうん、日本はベルっちに任せちゃおうかな……」


 そういうことで丸く収まりそうなのだった。


 そして本日、イカルガ女子チームが全員集合しているのは……。


「よし、このプログラムでは私とファティマが出てだな」


「いいと思います。演出は発注したものが届いていますからチェックして下さい」


「わらわはまだマスコット状態で参加するのかや? 生身で出てはいけない?」


「スファトリーさん、マスコットは老若男女と人種を超えて全ての対象に訴求できますから」


「ああ。マスコットのままでやってくれ」


「なんたること~」


 クリスマスイベントのためです!

 これが終わったら年越しやって、そこで本格的に私の配信は終わり。


 長いようで短かったなあ……。

 ちょっとしみじみとしてしまうのだった。


「師匠ー! 全員で歌うアレ、合わせておくのじゃー!」


「ほーい! みんな、明日に向けてバシーッとリハーサルやっとこーう!」


「はーい!」


「了解!」


「うーし!」


「やるわ!」


「この人数は初めてだな」


「みんなで歌うの、賑やかで大好きです」


「音楽を掛けるのじゃー! ほら、ポジションに移動して!」


 いやいや、イベントが一通り終わるまでしみじみする暇はないな!


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