第495話 きら星はづきVSメカはづき伝説

 学園祭がスタート!

 と、同時に、メカはづきが日本に上陸した模様と言う情報が入ったけど、そんなものは私がどうしようもない話です!


 なので、粛々とクラスの出し物の裏方を担当する……。


「はーっ! 出来上がり!」


「うおー! 師匠の薄焼き卵綺麗ー!!」「見てよこのオムライスの美味しそうなこと!」「はづきっち何でもできるの本当だったんだねえ……」


 ぐわああああ、厨房がリスペクトに満ち溢れていてむずがゆい!

 画面というフィルターとかを通さずに、私のプライベートまで侵食してくるとこんな気分なのかあ。


 だけど私はむずがゆさに負けることなく、次々にオムライスを作った。

 チキンライスは作り置きをレンチンだからね。

 全部冷凍してあるので、衛生上も安心!


 注文がどんどん出て、在庫ももりもり減っていく。


 おっ、外でチェキ撮ってる音がする。

 はづきのコスプレをしたクラスメイトたちと、一緒に写真を撮れるサービス付きなのだ!


 ネットに流すときは顔をぼかしてね、という注意付き。

 一人、素顔のクラスメイトを流したのがいたので式神を放っておいたのだった。


 すぐに投稿は消えて、それを勝手に保存した人たちのPCにも式神が行ってHDDとSSDとクラウドをクラッシュさせておいた。

 個人情報大切。


「でもまあ、忙しいとは言っても普段と比べると全然楽ですねー」


「やっぱり? 師匠、普段の配信で信じられないような動きしてるもんね」


「はっ、多窓が基本なので配信やりながら仕事もしてるので……」


「それなのに学校の成績もいいってどうなってるの……」


「授業は真面目に受けてるので」


 ほえー、とかまた感心されてしまった。

 そうこうしていたら、学校の外でギュイイイイイインッ!とか凄いエンジン音みたいなのが聞こえ、ドシーンと着地する気配。

 わあわあ騒ぐ声。


 何かが校舎に入ってくる。

 そしてしばらくして、我がクラスがワーッと大騒ぎになった。

 なんだなんだ?


 私が厨房を隔てるカーテンをめくって覗くと……。

 あっ!

 全身銀色に輝く私!!


 メカはづきだ!!


『うわ、マジでメカはづきだ』


「ベルっち出た!」「ほんとに出てきた!」「はづきっちが三人!」


『いやあ、バレちゃったらもういいかなーって思って……』


 ということで、出てきたベルっちと、急いでバーチャライズした私、そしてメカはづきが対面することになった。


『ハロー、オリジナル。私は解放の女神はづきです。人は私をマシーンはづき、あるいはメカはづきと呼びます』


「あっ、どうもどうも、オリジナルのきら星はづきです……!」


『ベルゼブブです~』


 私達が教室の入口で挨拶しあってるので、めちゃくちゃギャラリーが増えた。


「はづきっちの本物がいる!!」「やっぱこの学校にいたんだ!」「てかこのクラスにいたんだ!?」「はづきっちが三人!?」「かたっぽはベルっちだけど……」「メカはづきっちだ!」


 いかーん、大いに盛り上がってしまっている!

 仕方が無いので、クラスの出し物の邪魔にならないように移動を……。


「しばらく三人がおしゃべりしてる姿みたいからそのままでいてー!」


 委員長がなんか叫んで、クラスのみんながうんうんと頷いた。

 イノシカチョウの三人までそこに加わっているではないか。


 ど、どういうことなんだー。


『実は宇宙での戦いにも参戦したかったのですが、私には成層圏まで達する飛行能力がなかったために不可能でした。皮肉にもオリジナルが魔王を倒したことで信仰のパワーが一定値を超え、単独での成層圏到達が可能に』


「すごい話をしてるなあ」


『私達は私達で合体すれば単独でいけるじゃん』


「それもそっか……。最近どう? 何してるの?」


 ギャラリーの誰かが、「はづきっちが司会の人みたいになってる」と呟いた。


『私の元へ聖地巡礼をする方々が多くおられます。ステイツ国内ならどうにか車で移動できますから』


「ははあー、なるほどー! でも最近は飛行機も安全になってきてるみたいだし値下がりしてるから、向こうの観光客さん、日本にも来て欲しいですねー」


 私達三人のきら星はづき事情に、周りが大いに沸く。

 こんな漫談を聞いていて面白いのか……?


 ギャラリーの中にはWEBニュースやってる人もいるらしくて、途中でインタビュー形式で色々聞かれたりしたのだった。

 そして写真とか動画を撮りたいというので許可したり。


 ついに混雑が極まり、廊下の通行が不可能になってきた!

 本当にいいのかなあ……?


 そう思っていたら、生徒会の面々が走ってきたのだった。


「うわっ!! 本当にはづきっちが三人おる!!」「あのあの、きら星はづきさんたち! 申し訳ないのですが、通行の邪魔になるので体育館の特設ステージを使っていただけると……!」「ちょうど出し物の合間なんで」


「あっ、はーい。ごめんなさーい。二人とも行くよー」


『ほいほーい』


『了解です』


 私達を連れて行く途中、生徒会の人たちは「はづきっちと会話してしまった」「しかも三人だよ? 三倍! 三倍!」「ひいー、一生忘れない」「最高の学園祭だったなあ」なんて言っている。

 大げさな……!


 で、到着した体育館特設ステージ。

 なぜ、後ろにバンドが控えてるんですか?


 そして体育館を埋め尽くすほどのギャラリー。

 何を期待しているんで……?


 あっあっ、後ろで演奏が始まった!

 歌えと!?


『いいじゃんいいじゃん。お金関係は後で考えよ』


『当方に歌の準備あり。いつでも正確にハモれます』


「私に逃げ場なし!」


 仕方ないので、きら星!の三人バージョンを歌ってきた。

 いやあ、オーディエンスが盛り上がった盛り上がった……。


 途中から体育館に設置されてないミラーボールみたいなのとか、スポットライトの機能が自然発生してバリバリに演出をかましてくるから、何事かと思ったよ。

 歌い終わったらそういう機能が全部消えた。


 満場の拍手の中、それじゃあ、と世間話を始める私達三人なのだった。

 そしてたっぷり私と歌い、漫談を終えたメカはづきは……。


 満足気にアメリカに帰っていったのだった。

 な、何をしに来たんだー!!


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