第494話 ついにバレた!と学園祭伝説
「実は……あなたがはづきっちだって、私達みんな知ってたんです!! 黙っててごめんね!!」
委員長がいきなり、クラスを代表してそんなことを言うので、私は一瞬フリーズした。
そしてその直後に、
「な、な、なんだってー!! あひー」
私が椅子ごとひっくり返ったので、周りがわーっと駆け寄ってきた。
「大丈夫!?」「やっぱり配信のままのリアクションと悲鳴!」「最近は大物になってきて見れなくなってきたもんね」「懐かしー」
助け起こされたのだった。
イノシカチョウがやっぱりね、という目でこちらをご覧になっておられる。
もみじちゃんの言った通りだった。
い、一体いつからバレていたんだ……。
全然そんな気配なかったじゃないか。
恐ろしい恐ろしい、最近の女子高生の情報隠蔽能力は国家の特殊機関並じゃあないですか……。
「これは先輩が異常に鈍くて気づかなかっただけだとは思う」
「なんですとー!」
もみじちゃんのツッコミに、クラス全員がドッと笑うのだった。
さて、そんなわけでやって来ました学園祭の季節。
ついに三年目、高校最後の学園祭。
うちのクラスの出し物は何になるのかなー……。
「きら星はづき喫茶で」
「な、な、なんだってー!」
クラスのギャルっぽい娘が立ち上がってそう宣言したので、私が衝撃を受けて叫んでしまった。
周りがワーッと沸く。
い、いかーん! 決まってしまった!
「ほぼあなたの一声で決定したみたいなものよねー」
前の席にいるぼたんちゃんが、ニヤニヤしながら振り返る。
そんなー。
こうして準備は急ピッチで進んでいくのだった。
とは言っても、きら星はづきの衣装ってそこまで特殊なものは無いので。
ピンクのジャージや体操服を基本衣装として、昔のハロウィンのブタさんデビル衣装とか、作るのに苦労してたのは宇宙服くらい……?
水着は流石になしということになった。
おお、なんということであろう。
みんなが目の前で私のコスプレをしているではないか。
大変不思議な気分である。
「私は何をすれば……?」
「はづきっちが表に出てくると騒ぎになると思うので、厨房でどうでしょう……」
「委員長が現実的な話を……!」
さすがだなあと感心する私なのだった。
本物が出てこない、コスプレ喫茶だからいいっていうのはあるよね。
「出す料理は?」
「カンタンなのでいいっしょ」
「オムライスとか?」
「それで行こう」
お料理の相談を聞いて、私が再びポップアップしましたよ!
「じゃ、じゃあ洋食屋さん風で、あんま難しくなくて量産できる分かりやすいメニューをですね……」
私は恐る恐る挙手した。
クラス中の注目が集まる。
あひー!
こんな陰キャに注目しても大したことできませんよ!
とりあえずスマホでメニュー表を作成する。
で、送信。
クラスの前方隅でニコニコしている我が担任のスマホに届いた。
彼女はメニュー表を見ると、ポカーンとした。
「……この短時間で装丁までされてるメニュー作るとか……。本当にはづきっちなのねえ……」
そんなところで判断しないでいただきたい!
ということでですね、オムライス、チキンライス(ミートソース掛けのオプションあり)、ナポリタン、ミートソースパスタがミールメニュー、あとはアイスコーヒーとホットコーヒー、烏龍茶、麦茶、紅茶がドリンクメニューと言う感じで無難にまとめた。
これなら誰でも作れる……!!
オムライスとチキンライスはライス一緒だし、ナポリタンとミートソースはパスタ同じだし!
上に何を乗せるか掛けるかの違いだけだ。
「ちなみにオムライスとチキンライスを分けた理由は?」
「卵ダメな人用に……」
なるほどー、と納得するクラスメイトたちなのだった。
さあ、私の仕事は終わった!
全て終わったぞ!
あとは厨房で量産できるように、お料理の工程をまとめるだけだ。
……まだ仕事あるじゃないか。
学園祭まで二週間。
クラスのみんなは一致団結して飾り付けと衣装の準備をし……。
「えっ、厨房担当はピンクのジャージにエプロン!? なんとマニアックな……」
私が配信で使ってない組み合わせじゃないか。
恐ろしい発想力だよまったく……。
内心で戦慄したりもするのだった。
その間にも、私のきら星はづきとしての活動は芸能関係が中心になり……。
世界各国を飛び回って欲しいという要請が多かったけど、謹んで遠慮させてもらった。
もうすぐ配信活動やめるからね。
将来のための準備とか勉強とかしないとね。
それに、海外に行ったらクラスにいられる時間も少なくなるじゃない。
私、どうやらうちのクラスが結構好きになってたみたいなのだった。
配信、学校生活、学園祭の準備。
あっっっっと言う間に時間が過ぎて、学園祭当日になるのだった。
「本当に……本当にきら星はづき喫茶で良かったんだろうか」
「いいんじゃない? 正体知ってたのに黙っていてくれたいい娘達なんだし。その分、リーダーがここでサービスしてあげても」
ここは自宅。
朝食のトーストをもぐもぐしながら、ビクトリア。
既に食事を終えて、デザートのヨーグルトを食べているのはカナンさん。
「私も見に行かせてもらうとしよう。はづきをずっと守ってきた少女たちだ。素顔になって挨拶もせねばな」
「さ、騒ぎになるー」
「少しくらい良かろう」
『私は挨拶しなくていいの?』
「ベルっちは話がややこしくなるからなあ。いや、期待されてる気もしないでもないけど!」
わあわあ盛り上がっていたら、ふと気づいたようにカナンさんがとんでもない爆弾を投げてきた。
「そういえばはづき。アメリカで勝手に動き出した、あなたの像だけど」
「はいはい。勝手に動き出したっていうのがなんともまあ……。それがどうしたの?」
「日本に向かうと告げて姿を消したらしい。飛行能力を有するらしいが、レーダーでは捉えられていないみたいだ。恐らく超低空飛行で日本に向かって来ている」
「な、なにをしに!?」
ビクトリアが牛乳を飲んでから、にっこりした。
「そりゃあ、オリジナルに会いに来るんじゃないかしら」
あひー!
きら星はづき VS メカはづき!
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