第492話 ではコンサートも終わりということで……伝説

 ちょっと地球の軌道がずれてる?

 あ、はい、戻しますねー。


 私はゴボウの光が残ってるうちに、ちょっと地球を押した。


「戻った?」


『戻ったみたい! 大変動みたいなのがスパッと収まった。何をやったの?』


 ケイトさん……スレイヤーVさんこと大京嗣也元迷宮省長官の長女さんで、アメリカ留学しつつ割と名のある研究者になってる天才な人……が状況を教えてくれる。

 彼女が私をずっとサポートしてくれていたのだ!


 で、魔王が太平洋に手を突っ込んで地球の軌道をずらしたとかで、大騒ぎになっていたらしいのだった。

 私がゴボウで戻しておいたから大丈夫だね。


『でもはづきちゃん、大気圏まで突入してるのに、よくそこからやれたねえ』


「全体像は見たんで」


『すごぉ』


 褒められてしまった。

 なお、これもコンサートの間のトークで垂れ流しております。


 全世界が、地球の軌道がずれたんでちょっと大変動みたいなことが起きかけたって認識しましたね。

 いやー、魔王は恐ろしかったですねえ。


 そして、特設コンサート会場に無事着地ですよ。

 大歓声が私達を迎えてくれる。


「やあやあ、お迎えありがとうございますありがとうございます。じゃあコンサート衣装にチェンジ……」


※『そのままでいて!』『はづきっちの衣装最高!』『馴染みのあるコスが一番よ』


「ほんとう~? では皆さんがそう仰るなら……」


 このままの体操服で行かせていただきますね。

 おお、あと数ヶ月で着なくなってしまう体操服よ。


 そしてベルっちも飛び出してきて……。


 会場の男どもに動揺走る!


「あっ、今年の夏の水着!!」


『ふっふっふっふっふー。はづきがその姿なら、自然と私はこっちになるのだ』


 秋のコンサート会場に、キュートな水着姿のベルっち現る!

 ということで、ここでカバー曲を歌い始める私達なのだった。


 これは野中さとなさんの持ち歌で、前期のアニメ、聖女の腕力は最強です!の主題歌の……。


 と思ったら、御本人登場!!

 ステージ下の方から歌いながら現れる。

 あひー、なんか歌いながら私をハグしてくる~。


※『ああ~^』『やりやがったなさといもw』『欲望を行動に移すとんでもない女やで……!!』『いやしか女ばいw』


 コメント欄も盛り上がっておりますねえ……。


 私は野中さんをぶら下げたまま歌い切り、会場がウワーッと拍手をするのでした。

 盛り上がってる盛り上がってる。


 魔王もいないし、もう何の憂いもなく盛り上がれるもんねえ。


 その後、ビクトリアの歌をデュエットしたり、ゲストで外から来た三棋将が歌ったりとかしてですね。

 三人とも超絶ドッカンバトルのあとだからボロボロですが、ダンスのパフォーマンス落ちないのほんと凄い。


 で、最後に一曲虎になれ!のカバーを歌ったあと、これで終わりでーすと私は引っ込んだのだった。

 そうしたら……。

 怒涛のアンコールが!!


 いやあ、本当にあるんですねえ、アンコール!


「ね? あるでしょー」


 インペリアルレコードのノリマキさんが来ていて、得意げでいらっしゃる。


「でしたねえ……。じゃあ念の為に用意しておいて良かったですー」


「はい! 行きましょう、きら星!リミックスバージョン!」


 どーん!と飛び出した私とベルっち。

 会場もコメント欄も凄まじい大歓声。

 こんな凄い歓声は生まれて初めて聞きましたよ!

 リミックスバージョンを気持ちよく歌い……。


 決戦を含めてコンサートの時間は全部で2時間半!


 皆様おつかれさまでした~!ということで締めとなった。


 いやあ、拍手止まらないですよ。

 皆さん本当にありがとうございまーす!


 控室に戻ってきたら、テーブルいっぱいにチキンぎっしりの箱が置いてあったのだった。

 フライドチキン祭りだ!!


 ベルっちと二人でもりもり食べた。

 イノシカチョウの三人もほどほど食べて、ビクトリアはチキン四つ食べてた。

 食べるようになったねー!


 三棋将が後からやって来て、フライドチキン祭りに合流した。

 むしゃむしゃーっとサイの部分を食べてから、バングラッド氏が口を開いた。


『しかしきら星はづきよ、我は驚いたぞ! まさかまさかの大金星だな。というか、お主がやれなければ誰も出来なかっただろうがな……。どうやった? 同接の力を使うにしても、三十億ではあれに届かぬはずだが』


「よく分かんないんだけどねー。地球の後ろにたくさんの星がずらーっと並んでて、そこからウワーッとめちゃくちゃコメント飛んできた」


『ははあ! なるほど!』


「なるほどってどういう?」


 カモちゃんが首を傾げたら、トリットくんが解説してくれた。


「魔王が滅ぼしてきた世界が全部、はづきっちについたってことでしょ。どんだけの数になったんだ? そりゃあ、魔王を倒せるわ」


「先輩さっすが。カリスマ~」


 ははは、もみじちゃん、褒めまくるのよすのです。調子に乗ってしまう~。


 少しして、全てのお客さんが帰った頃合いでウェスパース氏が人間サイズになってトコトコやって来た。


『おうい、そろそろコンサート会場を消すぞ。物販はもう移動して、陸の方でやっておる。あ、チキンがあるのかありがたい。うおー、うまあーい』


 ドラゴンが骨ごとチキンをバリバリしておられる。

 その後ウェスパース氏は私のとこに来て、ポンッと肩を叩いてサムズアップして行った。

 ドラゴンだけど器用なお方だなあ。


 こうして私達もコンサート会場から退去して……。

 背後で決戦場となった特設コンサート場はゆっくりと薄れ、消えていくのだった。


 儚い……。

 そしてありがとう、コンサート会場!


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