第442話 勇者パーティは一味違う伝説
「ねえ、多分これ、日本のダンジョンはスーダンのよりもずっと難しいよ」
タリサが難しい顔をしている。
さっきの苦戦を取り返そうと、サイのパワーを呼び出してオーガを真っ向からふっ飛ばしたり、ジャッカルの力を使って一瞬だけ分身し、一人時間差攻撃を仕掛けたりしていたんだけど。
「ご不満ですか」
「それはそうよ。ハヅキ、あなたが鼻歌交じりに突き進むから、タリサだってやれると思ったのに……。強い。聞いてない」
むくれているタリサ、かーわいい。
私がほっぺを指で押したら、プスーと唇から息が出た。
「やーめーてー」
「ハヅキは何をじゃれてるのよ! ま、このフロアは一掃したけど?」
シェリーが呆れている。
彼女は常に数の暴力でダンジョンを押していけるからねー。
一人だけストラテジーゲームしてるみたいなもんだ。
カイワレは相手が強くないと真価を発揮しないので、最前線あたりをぶらぶら歩いては、出てきた弱いモンスターと互角に殴り合ったりしてる。
「あいつ、強いんだか弱いんだか分かんないなあ」
「ははあ、タリサちゃんにはカイワレの強さが分かりづらい」
「そりゃそうよ! さっきの強力なデーモン相手に圧倒したかと思ったら、今はゴブリンと勝負がつかないじゃない!」
「カイワレはどんな相手でも互角だからねー」
「何それ!?」
※『はづきっちの分析が的確過ぎる』『勇者パーティ、個性的な面々で面白いなあ』『モリトン・ゼルガーペアが一気にフロアの奥まで駆け抜けていったぞ』『突破力だと桁違いだなあ』
ユーシャちゃんはモコモコドローンのアフームたんを引き連れて、カウンター奥の厨房を覗いている。
「はづきさーん! こっちの奥に原因がありそうなんだけどー!」
『そうと決まったら突撃するのです! ユーシャの強いところを見せてやるのです!』
『もがーっ!』
おっと、そこにドリンクサーバーに潜んでいたスライムみたいなのが飛びかかる。
でも、アフームたんは落ち着いたもの。
『雑魚が! なのです! かーっ!』
顔だけ向けて、口から青いブレスみたいなのを吐いた。
飛びかかる姿勢のまま、カチコチに凍りついたスライムは、一瞬で粉々に砕け散った。
あのドローン強くない?
私があげたダンジョンコアかなー。
「うんうん、スパイスが見るにねえ、あのドローン、反転した大魔将みたいなやつだよー。あんなヤバいのどこから連れてきたんだろうねえ……」
「私があげたダンジョンコア」
「ええーっ! やばーい」
けらけら笑うスパイスちゃんなのだった。
彼女もまた、魔導書を何冊か周囲に回転させながら、魔法を放ってモンスターを撃退している。
タリサは難易度が高い! っていう日本のダンジョンだけど、この勇者パーティを前にすると全然持たない感じですねー。
「じゃあユーシャちゃん、どうぞどうぞ! お先にー。あっ、モリトン・ゼルガー組とタリサちゃんが行ったよ!」
「うわーっ」
慌てるユーシャちゃん。
パーティメンバーだが競争相手。
そんな感じで、フレッシュな三組が厨房に飛び込んでいった。
潜んでいたたくさんのモンスターがまた出てきてる。
どんだけモンスターが潜んでいたんだろう。
※『普段のはづきっちの配信だと、一撃で一掃されるからな……』『あくまで師匠役でついてくるだけのはづきっちというのは新鮮だ……』『ここまで来ちまったんだなあ』『はづきっちが出ると勝負が一瞬で終わるから……』
そうねー……。
私のこれはもう、手加減できるとかそういう次元ではないので、ゴボウそのものをいざという時まで封印せねば……!!
なんかとびっきりヤババなダンジョンが出てきたらやるので。
しばらくは勇者パーティ同行配信を見ていてくださいな。
「あっ、厨房の方が物凄く賑やかになってきましたねー。ボスデーモンが出てきたかな?」
厨房の奥から、物凄く大きなバンズが出てきた。
間に肉とかチーズとか大きなフライドチキンが挟まってる。
あれは、オールインワンバーガー!
バーガーエンペラーがたまに出す、むちゃくちゃボリュームの多いおもしろバーガーの一つなのだ。
それがボスになってたんですねー。
なお、他に倒されたっぽいデーモンたちは、次々に人間に戻ってる。
みんな店員さんみたいね。
「うっし、あたしも行きまーす!」
「ワオ! 待ってよ! くっそー、僕の相手のゴブリンは強いぞ! このっ! うおおー!」
『ゴブブーッ!!』
※『シェリーの突撃をよそに、カイワレがまだゴブリンと殴り合ってるw』『どうなってるんだこいつw』『同接が増えても増えなくても動きが変わらないんだよなあ』
勇者パーティ四組の集中攻撃を受けたオールインワンバーガー。
どんなに大ボリュームハンバーガーでも、堪ったものじゃないのだ!
あっという間にボコボコにされ、『ウグワーッ!!』と叫びながらバラバラの具材になってしまった。
それと同時に、ダンジョン化が解けていく。
「お見事ですー! 勇者パーティ最初の任務達成! ダンジョンクリアです!」
私はわーっと歓声を上げて、手をパチパチさせた。
なお、奥で倒れていた女子高生っぽい女の子を救出した。
バックルームにいたから助かったようです。
「大丈夫です?」
「え……? え、ええ、えええ!? 夢……!? はづきっちが目の前にいる……」
「あっあっ、本物です本物。ダンジョン化したところを助けに来た感じで……」
「そ、そうだったんですか……! あ。あの、あのあの、その、ギャルっぽい子いませんでしたか? 私のバイト仲間で、その、友達で」
「いないので、無事なのかも」
「あ……。そっかあ……。良かったあ……」
真っ先に友達の心配とは!
いい子なのだった。
で、彼女の顔にモザイクが掛かりながらも配信が続いてたので、
「おっと! ここでストップ! ストップでーす!! 配信終わり!」
強制的に配信終了ですよ!
※『本当に配信が終わったw!』『まあ一般人の人だからなあw』『あんだけヤバいダンジョン化で生存者がいたのは本当に良かったよなあ』『ここ最近で一番ヤバいダンジョン化じゃなかったか?』『魔王が直接関わってたりして……』
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