第425話 はづきの配信者強化企画伝説

 最近またダンジョンが強くなってきていて、新人配信者さんたちが大苦戦したり即引退(現世から)したりしていると聞いています。


「ということで! GW最後の三連休中日はこれで決まり! きら星はづきの、配信者強化プロジェクト~!」


 私が大々的に開会を告げると、既に分離しているベルっちが空き缶をカンカン叩いて盛り上げた。


※『なんだなんだw』『挨拶なしにいきなり始まったぞ!』『予告では同じこと言ってたけど、何をやるんだろう』


 私はコメントを見てうんうん頷く。


「疑問ですよね。今回のこれは、配信者がいかにして同接を集めて、パワーアップしてダンジョンに挑むかっていうのをお教えするプロジェクトなんです」


 おおーっ、とどよめく回答者陣。

 そう!

 今回のイベントは、イカルガのスタジオを使って外部から配信者さんを呼び、クイズ番組みたいな形式で行っていくのだ。


※『実践しないのに強化プロジェクトなの?』もんじゃ『何か考えがありそうだ』


「その通りです。私達配信者は、バズって同接を集めるほど強くなります。つまり、日々の訓練と同じかそれ以上に、毎日の営業活動やアピールが大事なのです!!」


 おおーっとどよめく回答者陣。


「はいはーい! ほんじゃあはづきちゃん!」


「はい、ゆくいちゃん」


 回答者は私の知ってる人を集めてあるのだ!


 彼女は石垣島を拠点にした、南国少女系の配信者、ぱいかじゆくいちゃん。

 ちょこちょこ人気が出てきて、沖縄本島の番組にもよく出るようになって、ちょっとずつ訛が抜けてきているのが悩みの種らしい。


「ばー(あたし)らがお題もらってなんかやって、はづきちゃんがそれをジャッジするの? ははあ、うむっさん(面白い)」


 ゆくいちゃんの言葉に、いちいちAフォンが字幕と翻訳をかぶせてくれて便利だぞ。


※『ゆくいちゃんかわいー』『さすがにこの季節、東京だと水着じゃないな』『普段着もかわいい』


 もう一人は、大手女子配信者グループDすぽ!に参加してからめきめきと人気を伸ばし、人気イコール実力である配信者界隈ではその力も認められてきている、ハンター系配信者の熊内またぎちゃん。

 前は割と実用的な、コートみたいなのとかイヤーマフに帽子みたいな感じだったけど。

 今はカラフルなコートに、カラフルなイヤーマフ、スポンサーの名前がついてるカラフルな帽子を被ってる。


 これはこれでかわいい……。


「ふむふむ、それじゃあま、私たちなりにこうすれば人気になるーっていうアクションを見せる感じだべ?」


※『またぎちゃんはクールビューティーだべな』『配信だとちょいちょいポンになるとこもかわいいぞ』『今ガンガン伸びてるからな』『こないだ30万人突破したんだっけ』


「うんうん、なるほどねー」


 またぎちゃんの言葉に頷くのが、黒胡椒スパイスちゃん。

 彼女?を含めたこの四人とベルっち一人でお送りします。

 この中に男性が一人だけいる!!

 だ、だれなんだー。


※『うおおおおおスパイスちゃんうおおおおお』『かわいいーーー』『声が好き、完璧すぎるボイチェンで編み出された声だとしても好き』


 スパイスちゃんへの愛が囁かれている。

 彼女には熱狂的な男性ファンが多いからなあ……。

 男のツボを知り尽くした所作とメスガキぶりに、男性ファンたちはメロメロなのだ。


 あれは分かりきった人々の高度なやり取りなのかも知れない。

 男性しか介在していないメスガキ道だ。


「はい。司会は私、きら星はづきでお送りします。コミュ障だと思ってたんですけど、知ってる人が多いのとまあまあ脚本があると全然普通に行けることが分かりましたんで」


※『明らかに今喋ってるところアドリブじゃんw』『はづきっちがアドリブに強いの俺たちよく知ってるからね』『想定外の状況にしか遭遇しないもんねw』


 な、なんですとー!


「色々突っ込みたいところですけど置いておきますね。はい。それじゃあですねえ。最近ダンジョンが強力になってきました! 世界的にダンジョンの休日が設けられて、みんな休まなきゃいけない日ができたことはいいんですけど……」


 ここでゆくいちゃんが唇を尖らせる。


「ばーはずーっと配信してたいのにー。休んでたらダンジョン、でぇーじ(大変)になってくしさー」


「私もちょっと苦労したべ。この新兵器のバーチャルスキー・ボードがなければ危なかった」


※『すかさずスポンサーから提供された新装備のアピール!』『あ、画面端にスポンサーのリンクが出たw』『そういう番組なのねw』


 バーチャルスキーボードは、アバター技術を使ったスキーね。

 短めのスキー板だけど、組み合わせると合体してスノーボードになる。

 で、なんならスキーだけじゃなく、道も走れるし屋内も走れる、階段を滑り降りることもできる。


 市販のは安全装置があるので、滑りすぎなくて安心!


 またぎちゃんはこれの、多分国内最強の使い手じゃないかしら。

 ダンジョン内を壁と言わず天井と言わず縦横無尽に滑りながら、手にした猟銃型ラーフ(スポンジライフル)でモンスターを的確にハントしていく。


「うんうん、スパイスも危なかったよー! こないだ回収した新型の魔導書がなければほんとに危なかったー」


※『スパイスちゃんはかわいいなあ』『この間の魔導書って浮遊のやつ?』『こんなかわいいのにギガントスケルトンを浮かせてから超加速させて地面に叩きつけて粉砕してたのエグかったけどスパイスちゃんがかわいい』


 スパイスちゃんも魔法少女としてパワーアップしてるみたいねー。

 うん、話が進まない!


「話をぐーっと戻して! ここで、私がダンジョンが強力になっちゃったよー、とお題を出すので、みんなはそれぞれ、こうやって対抗します! っていうのを答えてください」


※『まさかの大喜利スタイルだw!!』『クイズ番組じゃなかったw!!』


「進めます! あー、ダンジョンが強力になって困っちゃったよー! 誰かどうにかしてくれないかなー!」


「はい!」


「はい、ゆくいちゃん早かった」


※『大喜利が始まっちまった……w!!』


 一応、現役配信者の人たちのためになる番組のつもりですよ!!


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