第426話 はづきの配信者強化大喜利伝説

 配信者強化計画配信、最初のお題は、ダンジョンが強力になって困った配信者さんを、どうやって助けるか。

 ここで一番手に名乗りをあげたのは、石垣島密着型配信者、ぱいかじゆくいちゃんだ!


「ダンジョンが強力になっちゃったよー」


「ゆくいにお任せ! ばーはね、水着の写真を自撮りしてツブヤキックスで配信中って流す! ツブヤキッチでもネチョネチョ動画でもいいし! エッチなにーにーはまーる(とっても)いるから、みんな見に来てくれるー!」


「おおーっ!! それは確かに効果的ですね! センシティブを求める紳士たちは常にネットを徘徊してますから、撮りたての水着写真とか動画を見たらすぐに馳せ参じますからね!! 技有りです! 座布団一枚どうぞ」


『どうもベルっちですー。お座布団どうぞー』


「わーい!」


 ゆくいちゃんのお尻の下に、ベルっちが運んできたバーチャル座布団が滑り込んだ。

 この座布団の枚数が多い人が優勝。

 イカルガ露天風呂独り占めチケットをもらえる。


 なお、ゆくいちゃんはテンションが上がって、パッと配信用の服にお着替えしたので……。


※『あっ水着になった!!』『サキシマツツジ柄の水着だ!』『白地に真っ赤なサキシマツツジがたくさんついてるチューブトップビキニ、かわいい~』


 おっと、これは女子にも大変好評です。

 ポイント高いですねー。


「むむむ、女の武器だべ……」


 唸るまたぎちゃん。

 常に露出度は低めの装備してるもんね。

 山野を駆け回るハンター系配信者としては、肌は露出しないのが鉄則なのだ!


「で、でも場所によっては、私も脱ぐ」


※『またぎちゃんが水着に!?』『ここにまたぎちゃんの夏の、一瞬だけ行われた水着配信を貼ろう……』おこのみ『そ、そんなレアなものが!?』


「あっ、コメント欄でURLが貼られたみたいですね。今式神が安全性をチェックした後、詳細欄に貼り付けます。ご確認くださーい」


「ひぃー!? な、なんでその動画が今ここで出てくるのーっ!!」


 またぎちゃん、真っ赤になってかわいい。


「恥ずかしがるまたぎちゃんが可愛いので、お姉さん座布団一枚あげちゃおうかな」


※『はづきっちは心の底におじさんを飼っておるw』『現役JKなのにたまにシンパシーを感じるんだよなw』


 なにぃーっ。


「さて、いい答えが出ましたけど、でもそれって女の人限定ですよね。男性だと水着になっても人が来ないかも……いや、来るかも……? 全性別全年齢対応のお答えはあるかな? ダンジョンが強力になっちゃったよー」


 そしたらここで、様子を伺っていたスパイスちゃんがシュッと挙手した。


「はいっ!」


※『もうかわいい』『あまりにもかわいい』『にっこにこで挙手してる』


「はいスパイスちゃん! ダンジョンが強力になっちゃったよ~」


「じゃあさじゃあさ、かっこよくとか面白く編集したプロモーション付けてツブヤキックスに流しちゃおう! これなら男の人でも安心だね!」


※『おおー! なるほど!』『初期費用は掛かるが、上手く行けば視聴数とスパチャで取り戻せるか』もんじゃ『確かに小規模な個人配信者は初期投資で宣伝費用を考えたりしていないからな』


「なるほどー! これは効果的! 男の人の水着はマッチョとか綺麗系だとさらに効果的かも? 確かに水着ごとプロモーションであげちゃうのはあり! 座布団どうぞ!」


「わーい!!」


 こうして、三人がバランスよく座布団を獲得していった。


 今回の配信は、こうやって個人配信者に近い立場の人たちのアイデアをもらうことで、現場の助けになるネタをたくさん積み上げることなのだ。

 いきなり水着の動画とか、個人配信者のプロモーションが流れてきたってびっくりするだけでしょう。

 だけど、この動画でこう言う意味だよーって予習してもらえれば、リスナーさんも協力しやすくなる。


 無事に配信も終わり、同接数は三万人を超えた!

 大成功じゃないでしょうか。


 早速アーカイブ化の作業が始まっております。


 さらに、商魂たくましいイカルガは配信者座布団の販売を行うみたい。


 なお、抽選で八名に三人が座っていた座布団をプレゼント。

 今、どんどん応募が来てる。


「さっすがはづきちゃんって思ったー。すごいアイデアさー」


 ゆくいちゃんが感心していらっしゃる。

 配信外だと、彼女は割と意識して東京弁(ゆくいちゃん曰く)を使う。

 実は子供の頃は、八重山の方言が嫌だったんですって。


「ばー……じゃなくて、あたしね、小学校卒業するくらいに、漁師してたじいちゃんがダンジョン化した海に飲まれていなくなっちゃって。んで、八重山の海を守らなくちゃって配信者を目指したの。で、強みって何って考えて、あまくま(あっちこっち)行って聞いたり考えたりして。そしたら、八重山の海と山と森と、それとこの言葉だって」


 それが彼女のスタイルになったわけですねえ。

 で、私とコラボしてガーッと有名になった。


 今では、八重山諸島の配信者たちのトップランナーになっておられる。

 登録者数も十万人を超えたもんね!


「でも、今はそんな時間ないでしょう。短い間だと、みんなのーんならぬ(何もできない)から、はづきちゃんがこうして頑張ってくれるの助かると思うー」


「うんうん。助かる……。Dすぽっ!でもはづきちゃんに憧れてる人多いし。私もそうだし」


「あひー、そ、そんなに持ち上げなくても」


「はづきちゃんはさー、謙遜しすぎ! スパイスだってはづきちゃんに見つかったからブレイクしたんだし!」


 いや、スパイスちゃんは放っておいても発見されてブレイクした気がする……!!

 この配信界で一番かわいいおじさんは、それくらいのポテンシャルを持っている……!!


 ということで、ゆくいちゃんとまたぎちゃんが勝利。

 二人に露天風呂チケットをお渡ししました。


 スパイスちゃんはこれをニコニコしながら眺めて、パチパチ拍手をした。


 さすが、社会人経験のあるおじさんは人間ができていらっしゃる……。


「まあねえ、スパイスは魂の形がおじさんだから、魂が女の子の人に譲ってあげてもいいかなーって」


「もう姿形はおじさんになっているけど、魂の形がスパイスちゃんなのではないだろうか」


「よく言われるんだよねー」


 このおじさん、可愛すぎる。

 その後、プロモーションが流れたり、水着や面白い格好のアバター作成が流行りだしたらしい。


 ダンジョン配信はエンタメ!

 みんな、同接をバンバン集める工夫をして参りましょう!


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