第423話 師匠と弟子の、他の方の配信お邪魔します伝説
私とスファトリーさんは今!
ダンジョンまで来ていまーす!
そして何をやるかと言うとですね。
「師匠、こんなものでいいかや?」
「うんうん、もともとスファトリーさんはマスコットのアバター脱ぐだけで変装だけど、ここまでやったらイカルガの人にもバレないよー」
「師匠もまるで別人のようなのじゃ! いつもの前髪をおろしてちょっと猫背な感じではない……」
「あれは人混みが怖くてですね……!」
スファトリーさんは、スポーティなカラフルジャージに帽子、そしてサングラス!
戦利品の角を外しておけば、どこにでもいる異世界系女子だ。
そして私は……。
一般人っぽいアバターを被って、背筋を伸ばしておく。よしよし。
服装は、スファトリーさんと合わせたカラフルなジャージ。そしてサングラス!
並ぶと、長身のスファトリーさんと普通身長よりちょっぴり高めの私で、なんだか姉妹みたいな。
「武器はこれで行こう。はい、バーチャルゴボウ」
「……師匠、これはバレバレになるのでは?」
「一般販売もしてるから平気平気。これからデビュー目指してるんですーっていう顔をして行こう」
ということで私たち、配信をスタートする人に混ぜてもらうことにしたよ。
「す、す、すみません、これから配信者デビューする二人なんですけど、その、勉強のためについていってもいいでしょうかー」
相手は、真っ赤な髪の女の子なアバターの人。
にっこり笑って、
「もちろん! いいですよ! わたしもまだまだ初心者みたいなものだけど、色々頑張って教えますから!」
おおーっ、いい人だあ。
名前はユーシャさん。
勇者部チャンネルというところで活動してる人で、なんと私と配信歴が近いくらいみたい。
他に、彼女をサポートする同年代くらいの若い人たちがいて、彼らが勇者部の仲間みたい。
そしてユーシャさんとコラボして潜る個人系の配信者さんも。
よろしくお願いしまーす。
いい人たちに会えて良かったなあ。
そういうことで、私とスファトリーさんはダンジョンの状況を調べるべく潜入したわけです!
私の名前は、葉月まなつ、スファトリーさんはトリーナちゃんということにしております。
「まなつさんとトリーナさんは友達なんですか? 世界が違っても友情ってやっぱり成立するんですね! 感動だなあ」
ユーシャさんからそういう話を振られつつ、ちょこちょこスファトリーさんが「この人は師匠で」とか漏らしたりしつつ。
和気あいあいとダンジョン探索は進んだわけです。
そしてなるほど、モンスターは確かに強くなってるっぽい。
ユーシャさんもコラボの人も、登録者数は一万人に届きそうな結構な配信者なんだけど、ゴブリンとかオークみたいな一般的なモンスターといい勝負をしている。
一対一なら全然だけど、集団だと苦戦しそうな感じ。
これは一大事ですねえ。
私は画面外で、ゴブリンをチョップで粉砕しつつ考えた。
「あれっ!? 今まなつさん、ゴブリンを素手の片手間でやっつけなかった!?」
「い、いえいえ、そんなことは全然!! それよりユーシャさんってすごいですね! 現代魔法が使えるんだ!」
「そうなんですよ! 実は私、ちょっとだけ才能があったみたいで、現代魔法の使い方動画を見てやってみたらできちゃって」
天才かもしれない。
後ろでスファトリーさんがオークを蹴散らしてるけど、それを隠す感じで私はユーシャさんとお喋りした。
「あ、気がついたらモンスターが凄く減ってる……。強くなってるとは聞いてたけど、まだまだ行ける感じなんだ」
ユーシャさんは奥へ奥へと突き進む。
私とスファトリーさんは、画面の外でそれとなくサポートする。
いやあ、まさかアンブッシュしようとして天井の仕掛け扉からミノタウロスが降りてくるとは思いませんでしたねー。
私とスファトリーさんが無言でバーチャルゴボウでペチペチ叩いて、ウグワーッと叫ぶ前にミノタウロスを光の粉にしておいたけど。
「師匠、配信してなくてもいける感じじゃな」
「だねー。そんなにパワーアップしてないんだと思うよ。でも、ちょっぴりの差でもやっぱり他の人にはきついかもね」
ここで私、飛び道具を取り出す。
じゃーん、きら星はづきアクスタです。
「まなつさん、これは?」
「あの、わ、私……じゃなくて、私のお兄ちゃんがはづきちゃんのファンで……それでアクスタ持ってたら強くなるって聞いたんで、そのー」
「ありがとう! これ、人気でなかなか手に入らないやつだよね? 大事にするー!」
喜んでもらえた!
コラボ相手の人にも渡したら、ニコニコしながら受け取っていただけたのだった。
で、そこからユーシャさんとコラボの人が異常に強くなった。
苦戦してたゴブリンの群れを一蹴したり、最後はボスモンスターであるテレビ画面から出てくる怨霊みたいなのを、二人で魔法と射撃で滅多打ちにしてやっつけたりしていた。
やればできる人だったんだなあ。
「な、なんだろう。突然力が湧き上がった……」
なんでなんでしょうね……。
私達は正体を知られる前にクールに去りますね。
「師匠、あのアクスタ、本人が手渡したことで凄まじい強化の力を発揮したと思うのじゃが」
「あ、やっぱり……? こりゃあいかんですねえ……。そしてそれはそれとして、なんとなくお兄ちゃんの言ってたことが分かりました。少しだけ大人しくしよう」
私、きら星はづきはちょっぴりだけダンジョンをお休みすることを決めたのだった。
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