第422話 ダンジョンの休日?伝説
GW中に変な決まりができたみたい。
ダンジョンの休日というやつで、この日一日はダンジョン攻略をやめて、みんなのんびりしようというものだ。
これは一体どういうものかしら。
ダンジョンアタックをして同接を稼いでいる人たちには、当然ながら大不評。
だって飯の種がなくなるような話だもんね。
で、十分に地位を得ている人とかだと、別に構わないみたいな……。
「どうなんだろうねえ」
「さあねえ」
一週間くらいお休みした後、今は元気なカンナちゃん。
私はお見舞いがてら、彼女の家を訪れていたのだ。
お土産は私お手製のクッキーなどを持ってですね。
もみじちゃんの監修を得て完成したものなので、かなりクオリティ高いですよ!
「あ、はづきちゃんのクッキー美味しい! あまーい」
「そりゃもう。甘さ控えめなんて逃げだし!」
「あはは、確かに美味しさに妥協しないとなるそうなるよねえ。濃いコーヒー淹れてて良かった!」
「カンナちゃんのコーヒーも味わい深い……。もっとお砂糖いれても?」
「どうぞどうぞ」
私達は今日はお家デートくらいのつもりで……。
えっ、カンナちゃんは友達が遊びに来たくらいの感覚?
いいのですいいのです。
私は密かにちゅっちゅっとできていればそれでいい……。
推しの幸福をひたすら望む所存です。
「話は戻るけど、今日がまず最初のダンジョンの休日なんでしょ? ダンジョンハザードが起こらないといいよねえ」
「だねえ」
これまで何度も起こってきたダンジョンハザード。
ダンジョンを放置していると、中でモンスターが増えて熟成して、外に溢れ出すことになる。
そうなったら、街中そのものがダンジョンみたいになってしまい、たくさんの犠牲者が出る……みたいな状況になるのだ。
これはよろしくない。
ってことで、私達ダンジョン配信者は、そういうのを予防する役割も持ってるわけだけど。
カンナちゃんがうーん、と唸って腕組みをする。
「国が、ダンジョンの総元締めみたいな人と協定を結んだんでしょ? だったら大丈夫っていうお墨付きを得たんじゃないかな」
「なるほどー。ながらで見てたから全然そういうの分からなかった」
「それははづきちゃんらしい! それから私、何かあっても、はづきちゃんがいるから大丈夫って思ってるし」
「ははは、持ち上げすぎですよ……」
だけど、カンナちゃんの期待に応えるためなら頑張るぞー。
その日は、どこも配信が雑談枠とかゲーム枠だらけ。
実に平和な一日になったのだった。
懸念されてたダンジョンハザードも起こらないし、たまにこういう休日があってもいいじゃない? 程度の感じに……。
そうしたら、問題は翌日に起こった。
カンナちゃんと同期のグループであるトライシグナル。
その一人、水無月ミナさんが配信中……。
『あれっ!? なんだかモンスターが普段より強い……! この規模のダンジョンのレベルより上じゃない?』
魔法スタイルの彼女は、結界を張りながら魔法を使ってモンスターを駆逐する。
そういうダンジョン配信スタイルなんだけど、本来なら弱いはずのゴブリンやオークが、結界を破って襲ってくる状況になっていたのだ!
モンスターが強くなったというか、モンスターがその配信者にメタを張ってくるというか……。
大苦戦の後、水無月さんはなんとか脱出した。
世間では引き際が分からず、ダンジョンに取り込まれてしまった配信者さんもいたらしい。
これはなかなか大変なことでは?
案の定、国に非難が殺到したようで、迷宮省は対応に大わらわになった。
「これは私がダンジョン攻略に出て、問題点を明らかにするべきでは!」
私はなんか不思議な問題意識を宿し、兄にザッコでそう告げた。
そうしたら……。
『むしろお前が出ると話が有耶無耶になる。強力になり、配信者対策をしてくるダンジョンを真っ向から楽勝で踏み潰す女を見て、今のダンジョン政策に問題を抱くやつが出るか? むしろ全く問題ないという追認になる。お前はまた少しの間ダンジョンは休業だ』
「そんなー」
とにかく、兄は何か考えている模様。
そんな感じで、ダンジョンの休日を作ってから、明らかにこの国のダンジョンは強力になった。
配信者はソロで潜ることが推奨されず、基本はコラボを組むようにと言う話になったのだった。
くう……。
こ、これは、ぼっち系の配信者が辛い……!!
案の定、活動が難しくなる配信者もちらほら。
分かる、気持ちは分かるよ……!!
イカルガに所属してるクラスの配信者なら、一人でも全然平気なんだけど。
これは宇宙さん曰く、
「配信者の実力は、世間一般のイメージによっても変化するんだ。はづきちゃんがいるから、イカルガの配信者は実力が底上げされているとも言えるだろう。だから新人のスファトリーが単身で難関ダンジョンを突破できたりするわけだ」
彼女はマスコット人気があるからというのも……。
まあ、あまり楽勝で今のダンジョンを攻略してしまうと、色々問題があるということで。
イカルガエンターテイメントは、GW中は芸能活動やおうちでの活動をメインに展開することになるのだった。
これは、上が絶対何か企んでるやつ!
『師匠! こっそり最近のダンジョンの様子を覗きに行くのじゃ』
「あ、いいねー。一緒に行こう行こう」
ということで、こっそり秘密で、私とスファトリーさんは強力になったというダンジョン事情を確認に行ってまいります。
でも配信には乗せられないかなあ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます