第413話 新曲で大騒ぎ伝説
発売されました、私の新曲!!
もうね、知らんぷりをしてその日は過ごしてますよ。
土曜日なんで、本来なら私が直々に出張って宣伝できるんだけど。
絶対地獄のような大混雑になる。
そして私はそういう状況が極めて苦手である!
いやあ、全部MVでの演出にしてもらって本当に良かった。
ハハハ、と笑いながら私はスマホでSNSをチェックする。
おっ、PickPockで新しい動画流れてきてるじゃん。
うわあ、これはひどい混雑だな。
なんだなんだ。
『はづきっちの新曲! CDのオマケにオリジナルのアクスタが付くって!』『やべー! ほしー!』『水モードと風モードがあるって!』『2バージョン!? どっちも手に入れなきゃじゃん!!』
な、なにぃーっ!!
これは私の曲を買うために並んでいる行列だったのか!
目当てはオマケのアクスタみたい。
確かに新しいの撮り下ろしたもんねえ。
水モードは、水の大魔将と戦った時をイメージして、ジャージマントに体操服、そこにオリジナルのレインコートみたいなのを被ってる。
これはベルっちが担当してくれているのだ。
あの時はこんなのを身につけていなかったはずだが……!?
風モードは、バングラッドウイングで飛んでる私。
これもベルっちにモデルになってもらったやつ。
アクスタが斜めにでかい!!
昨日の夜から並んで真っ先にゲットした人が動画を上げてる。
めちゃくちゃインプレッション稼いでるなあ。
やるなあ。
転売すると呪いが掛かる私のグッズは、転売屋には大変不人気と言うか命に関わるので寄ってこないのだ。
だから欲しい人しか手に入れないと思うんだけど、そこまでしてゲットするほどのものなのか……?
「解せぬ」
『よくわかんないよねー』
ベルっちも出てきて、『下でなんか紅茶淹れてきてあげるねー』とか言ってくれた。
持つべきものは私!!
「ありがとーう!」
続きを見ていきましょう。
多分この人も、視聴数とかハートとかコメントを稼ぐためにやっているんでしょう。
こんな目をキラキラ輝かせて、アクスタ二つ手にしてぴょんぴょん飛び跳ねるとか……。
本当に嬉しいの!?
なんですって!?
『はづきっちアクスタ一番のりおめでとう!』『いいなー!』『私もゲットする!』『夜から並んでたってマジ!?』『めちゃくちゃ在庫用意してるんでしょ?』投稿者『最初にほしかったの!』
う、うわあーっ。
私の知らない世界が展開されている!
いつもはツブヤキックスのドブみたいな空間を心地よく漂っているので、キラキラしてるPickPockを見ると世界の違いにクラクラするのだ。
というか女子が多くありませんかね?
ツブヤキックスではおじさんとおばさんが跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)してるのに!
世界は広いなー。
と思いながら、気軽な気持ちで「お買い上げありがとうございます、カップラーメンの蓋の重しに使ってね」とコメントしておいた。
後々、このコメントがまた大きくバズったらしいんだけど、知らない。
私は何も知らないぞ!!
ちょっと話が大きくなってきているので、戻ってきたベルっちと二人で紅茶とビスケットを楽しみつつ、PC大画面で確認することにしたのだった。
あっ!!
アワチューブの生中継!!
めっちゃ人がいるよ!
私あそこにいないのに!
なんということだ……。
『はづき、これは緊急会見をせねばならないのでは』
「なんかそんな気がしてきた! やるか!」
ということで私たち、緊急のゲリラ配信であります。
自室からスタートした配信で、生中継の画面の中の人達がざわつくのが見える。
「こんきらー! きら星はづきでーす! ベルっちも一緒! 今日はみんな、私の歌を買うために集まってくれてありがとう! 曲だけならダウンロード販売でたくさん売ってるからね。アクスタはなんかかなりたくさん作ったそうなんで、欲しい人は慌てなくても大丈夫です、多分!」
『うんうん。いやー、それにしても驚いたよねえ。すっごく人がいっぱいいるんだもん。私たち、渋谷でリアルイベントをやろうって話もあったんだけど、絶対ヤバい大混乱になるからやめとこって話になって』
※『はづきっちのリアイベ!?』『うわー見たかった!』『やってー!』『今からでも遅くない!』
な、なんだとー!
というかコメント欄がいつもの民度と違う!
なんかこう、若さとかフレッシュさを感じるのだ。
これ、並んでる人達がリアルタイムで書き込んでるからか!?
「いやいやいや、もうね、洒落にならないくらいの混雑になるから! なので私、自宅でまったりと配信中です! あ、ビスケット食べます」
『お母さんが焼いてくれたやつ、美味しい~』
※おこのみ『ああ~サクサクASMR~』『はづきっちの咀嚼音はいいものですなあ』『突発配信にも対応した甲斐があった!』
「来たな、センシティブ勢!!」
なんかこの汚いコメントを見ていると安心してくるなあ。
実家のような安心感。
いや、今実家なんですが。
話題がすっかり私のビスケットサクサクに行ったところで。
「……でもニーズがあるならちょっと覗きに行こうかな?」
『行っちゃおっか』
なんかノリでそういう感じになったのだった。
コメント、大いに盛り上がる。
「えー、では上空を飛び回るので発見された皆さんは指さしていただければ……。ではゴー!」
ベルっちと合体し、ここからは行程までリアルタイム!
一気に飛翔して渋谷上空に差し掛かる。
「みなさーん! こんきらー!! ちゃんとお行儀よく整列して買いましょー!!」
大声で並んでいる人達に向けて叫んだら、ウワーッと盛り上がる。
それはそれは、一昨年のハロウィンパレードを超越するような騒ぎだったそうな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます